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灼熱⑦
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ふわりと余所行きの香りを漂わせた彼は、実に煽情的だった。
事が終わり、指を絡めながらコテージに戻ると、後片付けも終盤に入り人も疎らになっていた。
べたついた身体をどうにか早く洗い流したくて、
と、言うよりは先程の情事を悟られたくなくて。
驚く彼を追い抜いて、シャワー室に向かった。
熱い湯をかぶれば、洗い流せる気がした。
まだ完全に掻き出されてなかった彼の精液が、後孔からどろりと伝って、思わず身震いする。
拙い指先で怖ず怖ずと掻き出せば、意と反する上ずった声が漏れてしまう。
「っく……」
必死にそれを堪えて何とか全身を洗うと、シャワー室の扉が開く音がした。
各コテージにも風呂が付いているが、何となく皆と顔を合わせづらかった。それだけの理由だ。
だから、ここを利用するのは俺だけくらいかと思っていたのだけれど……
栓を締める。キュッと高らかな音が響く。
ペタ、ペタと一歩一歩近付くその足音と。
「……宵、大丈夫?」
俺を呼ぶ、聞き慣れた声。
「大丈夫、今出る。」
備え付けのバスタオルを手に取って気付いた。
着替えの服を持ってきていないことに。
これでは色々と染み込んだ服を再び着ることになってしまう。
「着替え、持ってきたから。ここ掛けとくな」
「……あ、ありがとう」
上からひらりと掛けられた服を手に取ろうとした瞬間、俺が入っていた個室のカーテンが開き、
彼が意地の悪い笑みを浮かべて立っていた。
「なーにコソコソとシャワー浴びてんの?もしかして抜いた?」
「…ばっ、ちげーよ!
あんなベタベタの格好をみんなに見られたくなかったんだよ!」
「ふーん?」
口の端を上げて半信半疑のような顔でこちらを見下ろす。
いつもと違う、香りを漂わせて。
「……ミヤ先生、もうシャワー浴びたの?」
「ん。お前の着替え取りに行くついでにね。黒井からシャンプー借りた」
「あそ…てか服返して」
服を奪おうとすると、軽々と躱される。
青筋が自分のこめかみに浮かんだ気がした。
「服、着させてあげようか?腰痛いんだろ?」
「は?!赤ちゃんじゃないんだから自分で着られる!」
いいからいいから、と屈んでパンツを履かせようとしてくる彼に、抵抗虚しくがっちりと捕まってしまう。
そろそろと穴に足を通すと、彼の頭が局部に近く、沸々恥ずかしさが湧き上がってくる。
「…………」
「よし、着れた。てか顔赤っ!」
「いや恥ずかしいだろ普通に…」
「意識しちゃった?やらしー」
立ち上がってシャツを着せようとしてくるので無意識に両手を挙げてしまう。
「……匂いがさ」
「へ?」
「好きな奴が自分と同じ匂いさせてるの感じると、征服感っていうか、支配欲感じて最高だなーって、この前宵が泊まりに来た時に思った」
「……だ、だから?」
「今日、何かめっちゃ不安になったから『宵は俺のだぞ』ってアピールするためにシャンプーから何まで俺と同じの使って欲しい」
「はぁ?!何だよそれ、束縛かよ!怖っ!」
シャツの裾を引っ張って直してから、俺を見上げた彼の顔は、冗談を言っているような表情では無く。
ゾクリとした。そして、実に煽情的であった。
「なーんか、嫌な予感がするんだよ」
「え……?」
茹だるような熱帯夜、シャワー室の中。
ヒヤリとする彼の視線は、灼熱さえも凍らせていくようで。
そして、それが一体何を予感しているのか、この時はまだ分からなかった。
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