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目論見
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「で、どうだった?月島くんは」
普段の冷静沈着な彼とは打って変わって、焦りを前面に出した表情でそう問うてくる。
「……言いにくいですけど、やっぱり月島は宮内先生と付き合っていると思います。
コテージ旅行に行った時に思いました。」
きっとこれは彼が望んでいない言葉。
でも、これがきっかけで俺のことを見てくれたら。
それに対し「そっか」と明らかに気落ちした彼の声。
「…………何としてでも、あの2人を引き剥がさないと…」
「その為に、俺がいるんでしょ?俊先輩」
その問いに、否定も肯定もせず彼は唇を噛み締めた。
白崎俊。
どうやらこの男は、根からの悪人では無いらしい。
好きになった奴を手に入れたい、それは至極真っ当な考えだ。
月島宵を宮内から奪う事は、頭の良い彼ならいとも簡単に出来るはずなのに。
どこかに残った善良で正常な意思が、彼にブレーキを掛けている。
「……全部壊れちゃえばいいのに」
ぽつりと自分の口から漏れた言葉。
これは、歯止めが聞いている彼の意思が。
月島と宮内の2人の関係が。
自分の恋焦がれる人に想い人がいるという、現実が。
全てに対して、投げかけた俺の願い。
「嘉音(よしね)、
君は月島くんに近付いて2人の仲をめちゃくちゃしてくれるだけでいい。……僕のことが好きなら、協力してくれるよね?」
「……はい、勿論です。」
本当は、首を縦に振りたくない。
嫌だ嫌だと子どものように泣きついて縋りたい。
俺の頷きに、彼はほっと表情を和らげた。
胸がズキンと痛む。
何で、俺じゃなくて月島なんだ。
それでも、彼が。
俊先輩が望むなら。喜んでくれるなら。
何でもやってやるさ。
*
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