アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
作られた邂逅④
-
「あ、嘉音」
焦ったように走って近付いてきたのは、嘉音というクラスメイトだった。
「看板を固定する木材を倉庫から運びたいんだ、手伝ってくれない?」
何で俺?と思ったが、人手がいないのだろう。
先を行って手招きをする彼に、慌ててついていった。
「何か、こうやってちゃんと話すの初めてだね」
歩くスピードを緩め、俺と並んで顔を覗き込むようにしてそう言った。
確かに言われてみればそうかもしれない。
「そうだな」とだけ一言返す。
「月島君、いつも友達に囲まれてるからなかなか話し掛けづらくて」
「そんな事ねーよ、気使わなくて良いのに」
「うん、だからこれからはたくさん話したいな。ずっと仲良くなりたかったんだ」
無邪気に笑う彼につられて、俺も笑う。
そこからは部活は何をやっているのだとか、色々と話した。
ただ、好きな人の話になった時、彼の顔が一瞬曇ったのは気のせいだろうか?
そして、「いずれ分かるよ」と自虐気味に呟いた。
倉庫の重厚な扉を開けると、埃っぽく湿った空気が立ち込めた。
1箇所に集められている木材を幾つか取って振り向くと、彼はすぐ側で俺を見下ろしていた。
その目はどこか虚ろで。
「……どうした?運ぶぞ」
「あっ、ごめん!ちょっとぼーっとしてた!」
暑いもんな、とフォローするとわざとらしく笑った。
「ねぇ、今日一緒に帰りたいな!」
「え?別にいいけど……」
暑さなのか、何なのか。
首筋に汗が流れる。
「聞きたいこと、たくさんあるしね」
彼は再び俺に向き直って、そう言った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
62 / 96