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作られた邂逅⑤
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「今日は沢村君たちと帰らないの?」
そう聞かれたのは、買い出しグループの奴らが買ってきた半ば溶けかけのアイスを頬張っている時であった。
「おう、まだ部活と練習が残ってるから先帰れって」
「そうなんだ」
何故安心したような顔を見せるのだろう。
そして、先程言っていた「聞きたいこと」とは一体。
「月島君、宮内先生と仲良いよね」
脈絡も無く彼の口から放たれたその言葉は、自分自身とこの場の緊張感を一気に強めるものであった。
平静を装い、話を続ける。
「そうか?確かに話しやすい先生ではあるけど」
「旅行に行った時思ったんだ、宮内先生ってあんな砕けた表情するんだ、って。
そしたらその側には必ず月島君がいてさ、てっきり仲が良いのかと」
「よく見てるんだな」
趣味は人間観察だからね、と自慢げに彼は言うが洒落にならない。
「話が合うのかもな、ミヤ先生とは」
「……ミヤ先生って呼んでいるんだ?」
「妙に詮索してくるな、何が言いたいんだよ」
悟られないように苦笑すると、「別に」と小さい声で零した。
「いや、ほら…ここ男子校じゃん?そういう恋愛もする人がいるのかな、って……。月島君はどう思う?」
「んー、まぁ良いんじゃねーの?色々な形があるだろ」
「そっか…そうだよね」
この話の流れで、彼は男が好きなのかと思ったが、そう尋ねると首を振った。
「今は、秘密」
その返事は俺の質問に答えたようなものであった。
違うなら否定をするだろう。
もしかしたら同じ境遇なのかもしれない、と妙な親近感が湧いた。
「そうだ、さっき言ってた『聞きたいこと』って何だよ?」
「ん、いいや。もう分かったから」
「そう、か」
気付けば街灯が点き、夜が顔を出していた。
妙に言葉の真意を突かずに濁す彼の口ぶりと、時折見せる影のある表情の正体を俺はまだ知らずにいた。
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