アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
警告④
-
「ごめん、遅くなった!」
鞄に顔を預けて不機嫌そうにこちらを見つめる彼を、夕陽が照らしていた。不覚にも綺麗だと思ってしまう。
こんなにも憎い相手なのに、今は白崎先輩の気持ちが少し分かるような気がする。
「何してたんだよー」
「や、えーっと…数Ⅰの課題のことで質問しに行ってたんだ」
「ふーん、真面目なんだな」
「もうすぐ中間テストだしね」
うげっ、とあからさまに嫌な顔をする彼は勉強が苦手なのだろうか。話を逸らしてさっさと行こうと急かしてくる。
目当てのドーナツ屋は、学校からほど近い商店街の中にあった。
甘い香りが漂ってきて、意識していなかったけれど空腹だったことに気付かされる。
シンプルで白を基調としたデザインの店内だった為入りづらさはさほど無かったが、やはり男二人で甘い物を物色しているのは少し恥ずかしかった。
「俺プレーンと抹茶とダブルショコラと……」
「いや…どんだけ食べるんだよ……」
「嘉音は?何頼むの?」
正直俺は甘い物が得意ではない。
今日はドーナツ屋に行く事が目的ではなく、月島と話をすることが実際の目的であったから、何を食べるかなど考えていなかった。
「…………1番甘くないやつで」
店員の苦笑いする顔が容易に浮かぶ。
店内は満席だったので近くの公園に行って食べる事にした。
「んまっ!」
ベンチに腰掛け、幸せそうにドーナツを頬張る彼の隣でため息をついた。
「ねぇ、ちょっと聞いていい?」
「ん?」
「やっぱり、月島君と宮内先生……付き合ってる、よね?」
突然の質問に激しくむせ返る様子から、彼は嘘をつくのが下手くそなのだろう。
俺は前から気付いていたが、そんな様子じゃあっという間に周りにバレるのではないか、と危惧してしまう。
「へ?な、何で?」
「文化祭の日、月島君と宮内先生が手繋いでるの見たんだ」
本当はそんな姿など見ていないが、カマをかけるという意味で嘘をついた。
「え、まじで?」
気が動転している彼は、嘘だということに気付かずしどろもどろに動揺している。
「うん、別に隠さなくていいよ。そういうの抵抗とか無いし……」
「う……ありがとう?」
「やっぱり。付き合ってるんだ?」
「おう……」
認めたということは、彼が隠していた秘密を他者と共有するということも同位だが、共有には必然と内容が拡まるという欠点が付き纏う。
つまり、見ず知らずの人に言えるようなものでは無い、という事は。
「言ってくれたって事は、俺は信頼されているって意味でいいんだよね?」
「は?」
心底不思議そうに首を傾げる彼。
「友達な時点で信頼もクソもあるかよ、信頼出来ない奴とは仲良くしないし」
「……」
馬鹿だ。
俺は彼を裏切っているというのに。
真っ直ぐな眼差しで俺を見て微笑む彼は、太陽のように眩しかった。
どうして、そこまで人を信じられる?
「そっか…あ、りがとう」
「?変な奴」
そう言って彼は3つ目のドーナツに手を掛けていた。
俺はというと、全く食が進んでいなかった。
一口、齧る。
甘ったるい味が口内に広がる。
「恋バナ、聞かせてね」
「は?絶対嫌だ」
「で?宮内先生とはどこまでやったの?」
「~~~何でみんな同じこと聞いてくるんだよ!!」
甘すぎる。
俺には苦いものだけで十分なのに。
苦手なはずのドーナツをまた一口、頬張った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
81 / 96