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企てる②
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無事に中間テストも終え、ふと窓の外から吹き込んできた風が冷たく、秋の気配を感じた。
ワイシャツ1枚では寒いか、と何となしに腕を擦る。
中間テスト最終日に組み込まれたホームルームでは、各々悲喜交々といった様子で、補習が確実だと酷く落ち込んでいる姿や、自信があるのか余裕そうに窓の外を眺めているクラスメイトもいた。
俺はと言うと、『とりあえずやり切った』という半ばやけくそな気持ちと達成感に包まれていた。
「おー、テストお疲れー」
そう言って気だるそうに教室に入ってきたミヤ先生は、ふわぁと大きな欠伸をした。
「あっ宮内先生!テスト難しすぎだろ!」
「つーか何で俺らより眠そうなんだよ!」
「…大きい声出すな!頭に響くだろ」
ブーブー不満を垂れる生徒達を他所目に、教師もテスト作成から採点まで徹夜でやっているんだと張り合う彼は、確かに心無しか目の下にクマがあって、眠そうである。
「とりあえずみんなよく頑張りました~
あとは答案返却を楽しみにしててな」
意地悪そうに微笑んだ彼を見て、あぁ今回も珍回答が続出したり赤点だらけなのだろうな、と何となく予想する。
と同時に、一学期の期末テストでよっちゃんが前代未聞の珍回答をしたのをタイミング悪く思い出し、唇を噛み締めて笑いを堪えた。
同じ考えだったのか、複数のクラスメイトが苦笑しながらよっちゃんを見た。
『え?!なに、俺なんかした!?』と慌てる彼が余計に面白い。
「月島、テストどうだった?」
沢村が振り返り、眉をひそめながら聞いてくる。
「んー……出来たとは言えないけど、とりあえずやり切ったから結果オーライ」
「俺も同じ感じ…理数系やばいかも……」
「終わったことを悔いても仕方ない、前だけ見ろ」
「かっこいいこと言ってるけど、お前全く説得力無いからな?」
そんな他愛もない会話をしていると、トークアプリから通知が来たのか、ポケットの中の携帯が僅かに振動した。
ディスプレイを見ると、嘉音からであった。
『放課後大事な話があるから体育館倉庫前に来て欲しい』
と、一言だけ。
「……え?」
「ん?どうかした?」
「いや、なんでもない」
「そうか?つーか腹減らね?飯食おうぜ」
「…おう」
……突然何だ?
妙な胸騒ぎを覚え、嘉音の方をちらりと見やると、彼は席を立ち上がり何処かへ行ってしまった。
続いてミヤ先生にも視線をやる。
彼は最前列の席の生徒と談笑していて、こちらに気付いていない。
こんなにも大勢人がいる教室で、まるでたった独りかのような気分になってしまう。
心細い。
漠然とした恐怖が、昼下がりの和気あいあいとした空気に似つかわしくないほどに俺を襲った。
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