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企てる⑤
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白崎先輩に指示された場所は、とあるアパートの一室だった。
「待ってたよ」
呼び鈴を押して程なく、扉が開かれると、そう言って満面の笑みで迎える白崎先輩がいた。
俺に寄り掛かって、荒い息を吐く月島を見て彼は『少し多すぎたかな?』と小さな声で呟いたのを俺は見逃さなかった。
「とりあえずソファに寝かせようかな、辛そうだし」
「あ、はい……」
ソファに寝かすと、月島くんの身体がピクリと揺れた。
名前を呼んで揺り動かすと、唸りながら薄く目を開けた。
屈んで彼の額を撫でる。
「んん……」
「ごめん、辛いよね」
「俺…に……な、にした…」
「えっと……」
返答に困っていると、不意に肩を叩かれた。
ミネラルウォーターを持った白崎先輩が、余裕そうな笑みをたたえて『あとは僕が話す』と言う。
「月島くん、僕だよ。」
「……しろ、さき…せ、ぱ……」
「そう、今日はごめんね。こんな強硬手段でしか君とゆっくり話が出来ないと思ってさ」
「………」
もう話すことなどないと言ったような表情で睨み上げる彼は、憔悴しきっていたが身体全面から押し寄せる拒否の感情が、俺にはありありと感じ取れた。
そんな表情を見て、白崎先輩が彼の顎を掬いとって無理矢理上を向かせた。
「…なに?その挑発的な目」
「…言ったろ……文化祭準備の日……
何をされても…先輩のものに、なる気は無いって……」
その瞬間、白崎先輩の動きがピタリと止まった。
そして低い声で、俺に『ここから出て行け』と言うではないか。
「お、れはどうすれば……」
「協力してくれてありがとう、でもここまでだ。ここからは僕と月島くんの時間だから……出ていってくれる?」
背を向けたままそう言う彼を見て、どうしようもなく虚しくなる。
自責の念が頭の中でぐるぐると駆け回る。
耐えられなくなり、この空間を飛び出した。
─ごめん
─ごめん、月島くん
─僕は君を、裏切った。
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