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――異変というものは一気に訪れるものではなく、対象を知らぬ間に侵食、改変していった結果の産物である。
一限、二限と過ごす内に得も言われぬ怠さを感じるようになった。重力が俺だけ倍増してるような感じだ。心なしか足元も覚束ない。
ふらふらとはするが風邪という感じではないし、一体どうしたものか。
昼まではなんとか持ちこたえたものの、意識を張って午後の授業を受けることは出来なさそうだった。
「西永、俺ちょっと保健室行ってくるわ」
「……どこか悪いのか?」
「ああ、どうやら女の子の日らしい」
「…………」
「そんな目で見んな」
実は軽口を叩くのも辛い状況にあった。「じゃあ俺の子供を生めるな」なんて返されていたら俺の方が無言になっていただろう。
しかし心配症な西永に余計な負担をかけるわけにもいかず、結果口先で誤魔化す羽目になるのである。
「ついていかなくて大丈夫か?」
「ああ、ありがとな」
西永に背を向け、軽く手を振りながらよろよろと教室を出る。廊下を少し歩いただけで動悸がした。重症だ。歩く度にどんどん身体が重くなっていくような錯覚がする。
ずるずると身体を引き摺るようにして歩き、やっとのことで階段に辿り着く。まだ階段かと絶望するが立ち止まっていては始まらない。
一息ついて、一段目を下ろうとしたとき――不意にがくりと足の力が抜けた。
手すりを掴もうと手を伸ばすが、コンマ数秒遅く、虚しく空を切る。
や、べ……!
違和感にも似た浮遊感に身体を包まれる。
すぐに観念して目を瞑った。
西永に言われた通り、俺はなんでも簡単に諦めているなと自嘲を零す。
このまま落ちていくのだと思った。
――後ろから伸ばされた手に、強引に引き戻されるまでは。
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