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赤い髪の少女
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俺は、他人に興味なかった。
父親が趣味で集めた様々な銃を眺め、それを分解し、また組み立てる、そんなことばかりをしていた。だから友などいなかったし、必要あると思わなかった。
「無表情」
「なにを考えてるか分かんない」
「目つきが悪い」
学校に行けば陰口を言われる。それも分かっていたけどなんとも思わなかった。
成績は良かった。運動神経も良かった。
だが、愛想がない。
ただそれだけのことである。
学校の帰り、小石を蹴りながら一人で歩いていると、花屋から出てきたあいつと鉢合わせになった。
金色の短い髪に、青い目。同い年のくせに俺よりも10cmほど身長が高くて体格もいい、ラルス・ヘルゲンである。
俺はラルスと目が合ったその瞬間、顔を顰めた。
こいつは顔を合わせるたびに声をかけてきて、「昨日なに食べた?」とか「好きな色は?」とかクソくだらねえ質問ばっかりしてくる。当然無視するが、それでもお構いなしに話しかけてきて、勝手に満足して去っていく。
……俺はこいつが嫌いだ。
ラルスはなぜか、男女共にモテる。いつもクラスの中心にいるくせにわざわざ俺のところへ来る。大方、ひとりぼっちでいる俺に同情でもしているんだろう。余計なお世話だ、クソ野郎。
「よお!」と親しげに話しかけてくるラルスの横を通り過ぎようとしたけど、素早い動きで目の前に立たれ、通せんぼをされる。
「今から家に帰んの?」
見れば分かるだろうが、クソ野郎。
「一人?」
それも見れば分かるだろうが。
「俺は一人じゃない!」
聞いてない。
ラルスが振り返って、後ろに向かってなにか言ってる。
「紹介するよ、俺の妹」
この流れで妹。ラルスの行動はほんとに読めない。
興味なんて微塵もなく、ラルスの大きな身体の後ろから出てきた妹らしき人物のことを冷ややかに見た。……のだが、びっくりした。多分俺は間抜けな顔をしていたと思う。
「ヴァネッサ……ヘルゲンです」
女の子は恥ずかしそうに小さな唇をもごもごさせると、サッとラルスの後ろに隠れた。
くりくりとした大きくて黒い瞳に、白い肌。そしてなによりも、ちょっとウェーブのかかった真っ赤な髪が強烈だった。
「な、な、可愛いだろ?俺の妹」
ラルスはまるで自分のことのように、誇らしげにフフンと鼻を鳴らす。
「……うん」
無意識のうちに頷いていた。
女の子を可愛いと思ったどころか、動物すらもそう思ったことがない。
だが、ラルスの妹ヴァネッサだけは違った。
とにかく可愛いのだ。
ラルスの妹とは思えないくらい。
ラルスは素直に頷いた俺にびっくりしたのか、こちらの顔を凝視している。でも俺はそんなことお構いなしに、ラルスの後ろからこちらの様子を伺っているヴァネッサのことを見つめていた。
そんな俺に戸惑ったのか、ヴァネッサはラルスのシャツを引っ張って「この人はだれ……?」と首を傾けている。
俺はヴァネッサに歩み寄って、柔らかな笑みを浮かべた。
「クシェル、クシェル・ギーツェンだ」
彼女が欲しいと、そう思った。
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