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森に住む男
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俺は特別なにをするわけでもなく、ぼーっと外を眺めていた。
……俺は、父さんとラルスに捨てられたのだろうか。
父さんは俺のことが好きじゃなくなったみたいだし、ラルスも母さんの息子だからってことで面倒を見てくれていただけだろうし……、俺のこと、邪魔になったのかな。
どれだけ考えても、それ以外に二人がいなくなった理由が思いつかない。
悲しいはずなのに、涙も出なかった。
「雨はまだ降っているし、これから暗くなる。今日は泊まって、帰るのは明日にしろ」
呆然とする俺に、キオンはなにも聞かずにそう言ってくれて、それに無意識のうちに頷いていた。
帰る家などない。
多分、とっくの昔からなかった。
母さんがいなくなってから俺たち家族は変になった。
俺がそれに気付いたのはつい最近だけど、きっと、それに一番早く気付いたのは、
「レイ」
名前を呼ばれて我に返る。
振り返ると、キオンがランプを持って立っていた。
「まだ起きているのか」
「…………ううん」
寝れそうになんてなかったけど、泊まらせてもらっている分際で夜更かしなんて出来ない。
「じゃあ、お前はあの部屋を使え」
キオンが指差したのは俺が目を覚ました部屋だ。
俺は頷きかけたが、そういえばキオンはここに一人で暮らしていると言っていた。ならば、あのベッドは普段彼が使っているものではないか?
「キオンは、どこに寝るの?」
「気にするな。俺はどこでも寝れる」
やっぱりベッドはあれしかないのだ。
「そ、そうは言ったって……俺こそ、どこだって寝れるよ。泊まらせてくれた上に、ベッドを占領なんて出来ねえ」
キオンの琥珀色の目が俺のことを見下ろした。
「なら、一緒にベッドで寝るか?」
「……え?」
驚いた。
俺にはどちらか片方がベッドを使う、という考えかしかなかった。確かにあのベッドは一人で寝るには大きいし、大人の男二人で寝ろと言われれば寝れるサイズではあるが、キオンはそれでいいのか。
だが俺が断れば、キオンのことが嫌だと言っているようなものだ。
恩人にそんな無礼を働くわけにもいかずに頷くと、キオンは首を傾けた。
「お前、寝相悪くねえだろうな」
「ッ、し、失礼な……!悪くねえ!」
「そうか」
そのとき、仏頂面だったキオンの表情がほんの少し和らいだ気がしたが、キオンに腕を引っ張られて連れて行かれたせいで、もう顔が見えなかった。
俺がベッドの壁側に、その隣にキオンが寝そべった。
キオンが灯りを消してしまうと部屋は暗闇に包まれ、降り続ける雨音だけが聞こえてくる。
……今日会ったばかりの人と同じ布団で寝るなんて、そう滅多にないことだ。落ち着かなくて寝返りを打って壁を向く。
横になれば眠くなるかと思ったがそうはいかず、生足に直接触れる布団が少しくすぐったくてもぞもぞと動いていると、「うるさい動くな」と闇の中からキオンの声が聞こえてきて、ピタリと動きを止めた。
そんなこと言うなら、やっぱり同じベッドでなんて寝なきゃいいのに……。
そう思ったが文句も言えず、眠りに落ちるまで、ただじっとしているしかなかった。
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