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狼
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キオンは俺のことを見下ろしながら、切なそうに眉を寄せている。
「だから、その顔……まあ、いい。とにかくさっさとヤっちまうぞ。ここの家の住人が帰ってきたらマズイだろ。……俺は別に構わないが?」
「ッは、はあ!?ほ、本気でそんなこと」
「言っとくけど、レイが俺のちんこ勃たせたんだからな。だからお前が悪い」
意味が分からない。なぜ、俺が悪いっ?
キオンは言っているそばから、素早く俺のベルトを外してしまい、ズボンと下着を掴んで足から引き抜こうとしている。
俺は我に返って、腰をよじらせてそれを阻止しようと暴れた。
「やめろクソ狼ッ!変態!!お、俺はもう、絶対に」
すると、キオンはあっさり手を離して「そうか」と呟いた。
「え……っ?」
俺は拍子抜けした。まさかこんなにすぐ俺の言うことを聞いてくれると思わなかったからだ。
キオンがニイッと口角をつり上げる。
「お前は、自分が犯されているところをここの家の人に見てもらいたいんだな?」
「……は?」
こいつは、一体なにを言っている……?
「レイ、俺はな。お前が恥ずかし屋さんなのを考慮してやって、家主が帰ってくる前にお前とヤっちまおうと思ってたわけだ。なのに、お前はヤダヤダってワガママばっかり言う。……それはつまり、見てもらいたいってことだろ?」
なんて無茶苦茶な。
「な……なんで、ヤる前提で話が進んでやがる!俺はそもそもヤりたくなんかねえんだよ!!」
あんな痛い思いも苦しい思いをするのも嫌だ。
すっと、キオンの目が細められた。
「ほう……じゃあ、やっぱ時間をかけてお前がシたくなるようにするまでだな」
「ッだ、だから……!」
俺はビクンッと身体を震わせた。
見れば、ズボン越しに俺の股間をカリカリと引っ掻いていた。それは決して強い刺激ではなく、くすぐったいような、むず痒いような、刺激である。
「あ、や、やめ、」
「なんだ、もうシたくなったか?」
「違う!!」
キオンは股間を引っ掻きながら、俺の頰にキスをしてくる。俺が咄嗟に顔を逸らすと今度は俺の耳に唇を落としてきた。
「あ……っ」
ぬるっとしたものが、俺の耳を這う。それからピチャと濡れた音が聞こえてきた。
舐めて、る?
そう思った瞬間、顔が熱くなった。
俺は力いっぱいキオンの肩を押しやる。
しかし避けるどころかグッと身体を寄せてきて、俺の上半身とキオンの上半身が密着した。俺よりも大きいキオンの身体は重く、起き上がろうと踏ん張ってみるが無駄な体力消耗をしただけだった。
こいつ、ほんとにこんなことをずっと続けるつもりなのか?
ここの家主が帰ってくるまで……?
ゾッとした。
「ちょっと考えれば分かることだろ?」
キオンが耳元で囁いた。濡れた耳朶に吐息がかかってビクッと肩が震える。
「お前のいやらしい姿を他の人に見てもらうか、それとも……家主が帰ってくる前に終わらせて、何事もなかったようにここを出て行くか。そんなのどっちがいいか、なんてよ」
俺は目を大きく見開いた。
「ほら、言っちまえよ。俺はもう準備万端なんだ。レイが欲しいって言ってしまえば、すぐに突っ込んでやるよ。……ああ、痛いのが嫌ならちゃんと慣らしてやるが、なら尚更今の時間は勿体無いよな」
「どうするレイ」と、キオンは首を傾けた。
つまりそのどちらかを選択するということは……逃れることを諦めるということだ。
「お、俺は……」
「どっちも嫌だ」と言いかけて、止まる。さっきもそう言って、「家の人に見てもらいたい」という謎の変換をされたじゃないか。
「……俺は本気だぞ、レイ」
キオンの琥珀色の瞳が細められ、背筋に寒気が走る。
……キオンはたまに怖い顔をする。凶暴な肉食獣みたいな、まるで俺が獲物になった気分だ。まあ、ある意味キオンが凶暴な肉食獣ということに間違いはないのだが。
そんな目をしたのはほんの一瞬で、ころっと笑顔に変えるも、優しく俺の頰を撫でてきた。
「もしかしてセックスが怖いのか?そうだな、初めてシたときはちょっと乱暴だったかもな……。だがな、あれはあの日が満月だったからだ」
「えっ?」
驚いて目を丸くした。
「満月の日は感情が高ぶって、自分でもどうしようもなくなる。でも、今日は満月じゃないどころか、夜でもない。だから優しく出来る」
俺はキオンのことを見つめた。
「そ……それはほんとかっ?」
「ああ、ほんと。満月の日に豹変するなんて狼男らしいだろ」
確かにあの日はずっとおかしかった。
それは満月だったからか……。でもだからといって簡単に身体を許すわけにはいかなかった。セックスが怖いというのには変わりがない。
「なあに、レイ。お前の考えていること、本当はよく分かっているんだぞ」
聞いたことがないくらいの優しい声だ。
「本当は俺なんかに抱かれたくないし、痛いことも苦しいことも嫌だってよ。だから別に恥ずかしがることなんてねえ」
「ど、どうして……?」
「お前の本心じゃないって分かってるからだ。だからなにを言っても、俺はほんとのこと分かっているから大丈夫だぞ?……ほら、賢いレイならどっちがいいか分かるだろ。言ってごらん」
俺は眉間に皺を寄せながら、頭をフル回転させた。
一番最悪なのは、俺とキオンがそういうことになっているときに家主が帰ってくること。
次に最悪なのは、キオンとセックスをすること。しかも今回は強姦じゃなくて俺の同意の上で、だ。屈辱的なことでしかない。
やっぱり……俺は横目に部屋の中を見渡して、窓やら扉を見遣る。
キオンから逃げ出すことが一番だ。だが、どうすれば逃げられるなんて考えても成功する気がしない。
一か八か走って逃げる……間違いなく追いつかれる。そもそも上に乗っかっているキオンの身体さえ退かすことが出来ない。
それに俺はナイフも銃も持っていない、丸腰だ。
キオンを傷付けにきたわけではなく、話をしにきたという現れになるかと思ったが、こうなるんだったらなにかしら武器になるような物を持ってくるんだったと後悔する。
いや、武器があったところでどうにかなるものか?銃を持っていた父さんでさえ、右腕を持って行かれたんだぞ。
だめだ、この状況を打破する案が思いつかない。考えなしにきた俺のアホさ加減しか分からない。
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