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温もり
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キオンの掌が尻を撫で、それからゆっくりと腿の付け根に触れ、その手が前の方へと伸びてきた瞬間、俺は耐えかねてキオンの手首を掴んだ。
「い、言う、言うから、……ッ」
キオンの目が細められた。
「ふうん……なら早く言え」
しかし、言うと言ったのにもう片方の手で俺の尻にセクハラを続けてきて、俺はギョッとした。
「こ、このクソ野郎!ちゅうだけって、」
「ちゅうはしていいってことか?」
「ッの……!」
人の揚げ足ばっかり取りやがって!
皺を寄せた眉間にキオンがキスをした。そして「言わないのか?」と言わんばかりに俺の顔を見てくる。
「……顔、離せ」
「言ったら離す」
まったく話にならない。
かと言って、このままだとずっとケツを揉まれる。
俺自身が言うと言ってしまったからには、言わなければならないか……小さくため息を零した。
「勘違いつーのは……その、髪のことが関係してっていうか……」
口を動かしていくうちに自然と視線を下ろしていく。
キオンは「どういうことだ?」と首を傾けた。
「だっ、だから、お前は俺の髪が……き、綺麗だと思うんだろ?」
「ああ、そうだ。美しいと思う」
ど直球。
照れからか恥ずかしさからか、ボッと顔が熱くなるのを感じながら、少し苛立っている自分もいた。
「そういうところっ!お前の、そういうところが勘違いするって言ってんだよ!!」
しかし、キオンの方はよく分かっていないようで、少し間があったあと「どこだ?」と首を傾げた。
「綺麗なのを綺麗だと言ってなにが悪い。レイの髪はすげえ綺麗だから、好きだ」
なんでこいつは、こんなにはっきり好きだなんて言えるんだ……っ?
「〜〜ッの、アホ!!お前が俺の髪を綺麗だって言ってくれるから、俺がキオンのこと好きだって勘違いしちまうだろって話!!」
……はっ。
我に返ったときは、言ってしまったあとだった。
「レイちゃん。それはどういう意味だ?」
ニヤーッと今まで見た中で一番いい笑顔をうかべながら、俺の両手首をガッチリと掴んだ。確かにいい笑顔のはずなのに、なぜだろう、冷や汗が止まらない。
「褒めてくれるから俺のことが好きって勘違いするって?ん?」
顔に穴が開くんじゃないかというくらい見つめられ、ギシッと身体が強張った。
「なんだ、まただんまりか?焦らすなよ」
「じっ、焦らしてなんか、」
「レイは俺に褒められるから俺のことが好きだって勘違いしたくねえってことは、それってつまりよ」
キオンの琥珀色の瞳がきゅっと細められた。
「そんなことなしで、俺のことが好きだって思いたいってことか?」
低い声で囁かれ、身体が沸騰したように熱くなった。
「それとも俺が好きだっていう気持ちを勘違いだってことにしてえのか?」
「レイ」とキオンが耳元で囁く。
身体が痺れるようだ。
キオンの声は元々低いから普通に聞いているときでもゾクッとするときがあるっていうのに、名前を、それも耳元で言われたら呼吸が止まりそうになる。
「俺……キオンが俺のことを好きだって気付いたとき怖くなった。今まで俺のことを怖がったり、嫌ったりする人ばっかりだったから……」
「嫌、だったか?」
俺は首を振った。
「そんなわけない……!だって、俺も、俺だって、」
大袈裟かもしれないが、言わなきゃ今度こそ呼吸が止まるかもしれない。そう思うくらい、俺の心臓はうるさいくらい高鳴っている。
俺は、苦しくなって顔を顰めた。
恥ずかしさとか、戸惑いとか、全部を置いてけぼりにしよう。
そうでなければ、こんなこと、言えそうにない。
「好き、だ……キオンの、こと」
「キオンが俺の髪を綺麗だって言ってくれるからじゃない……俺が、ちゃんとキオンのことが好きなんだって……そう思いたい……」
決して勘違いではないと。
「……初めからそう言えばいいのにな」
キオンの声に恥ずかしさが一気に込み上げてきて、おそらく変な顔をしているだろう。
対してキオンは相変わらずのニヤケ顔……いや、いつも以上にヘラヘラしてやがる。
こいつは俺がどんな気持ちで言ったか分かっているのだろうか?
「勘違いがどうとか、そんなめんどくせぇこと考えんなよ。俺のことが好き。それでいいだろ」
「……よくねえわ、アホ。お前はそれでいいのかよ」
「ああ、いいね」
俺の手首を掴んでいた手を離し、キオンは俺のことを抱き締めた。ギュウッと強く、痛いくらい。
「ッ、おい、キオン……!」
堪らず悲鳴をあげて身体をよじらせる。
そんな俺のことなんかお構いなしに、キオンは落ち着いた声で言った。
「レイが、俺のこと好きならそれでいい。理由なんてどうだっていい」
……なんだ、それは。
「レイが俺のことでそうやってモヤモヤしてたってだけで、俺は結構……う、嬉しいんだぞ」
「は……?」
「だってそれ、俺のこと考えてるってことだろ?」
否定は出来ない……病院にいるときも、ずっとキオンのことを考えていた。だけど、
俺は目を瞬かせた。
「……普通そんな考え方になる?」
まるで、色々考えた俺がバカみたいじゃないか。
キオンは大きくため息をついた。
「あーあ、ほんとレイちゃんは可愛いなあ」
なんてほざきながら、額を俺の肩にグリグリ押し付けてくる。
そのせいでキオンの髪が首筋に当たってくすぐったい上に、重い。
「やっ、クソやめろッ!」
そして「好き」という感情を自覚してしまったせいで余計恥ずかしい気がしてならない。
対照的に、俺が嫌がっているというのにキオンは嬉しそうに見える。だらしなく鼻の下を伸ばして「レイは照れ屋さんだから」とかなんとか言ってる。
背筋がゾワッした。
俺はキオンの足の甲を踏んづけたが、キオンは大して表情を崩すこともなく、むしろ笑みを深くした。
「なんだレイ、やっぱ照れてるのか?ただ抱き締めてるだけだろ」
「バカか!照れてんじゃなくて」
「こんなことより、もっとすごいことシただろ?」
ちゅっと音を立てて、俺の耳にキスを落としてきた。
考えなくともなんのことを言っているのかすぐに察しがついた。
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