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温もり
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突然ちゅっと音を立てて、キオンが首筋に吸い付いてきた。今度は俺の方がびっくりする。
「っ、た……!」
吸われているところに痛みが走って、また驚いた。
さっき抱き締められるのは安心するとか言ったばかりのくせに、今はその腕から逃れようと必死だ。
やがて口が離れた。その瞬間、キオンの足を踏んづけて腕から脱すると、俺は吸われた首を掌で覆いながらキオンのことを睨みつける。
「なっなにしやがる……!て、てめえ、血でも吸う気か!?」」
しかしキオンはそれを聞いて、なぜか大笑いした。
「なんだレイ、知らねえのか?さっきの」
「は、はあ?」
さっぱり言っていることが分からなくて、頭の上に沢山のクエスチョンマークが浮かぶ。
キオンは「ククッ」と喉の奥で笑うと、離れた俺に近寄ってくる。
反射的に離れようとして数歩下がるが、部屋の真ん中にあるテーブルに阻まれて、これ以上下がれない。
キオンは「そんなに警戒すんなよ」と言いながら、キオン自らの首を人差し指でトントンと叩いた。
「キスマーク。それをお前の首に付けたんだよ」
「……きすまーく?」
棒読みで、おうむ返しする。
俺にはキスマークがどういうものなのか分からなかったが、頭をフル回転させて考えてみる。
キスマーク……キスってことは、唇?唇のマーク?
まさか俺の首にキオンの唇の形が残ってるんじゃないだろうな……?
ハッとして手を取り、見えるわけがないのに自分の首を確認しようとした。
が、キオンが俺の両手首を掴み、すごい力でテーブルの上へと一瞬にして押し倒された。
見事に後ろ頭をテーブルにぶつけて、ゴンッと音がしたのちに鈍い痛み。なにをするんだと言わんばかりにキオンのことを睨みつけると、キオンは皺の寄った俺の眉間にキスをしてきた。
俺は身体を震わせる。
「いっ、今も、キスマーク、つけた……っ?」
そんなところにキスマークなんて付けられたら死ぬほど恥ずかしい。第2の口状態になる。
それを聞いたキオンが吹き出した。
「あのなあ、レイ。キスマークつーのは……いいや、言うより見た方が分かりやすいかもな」
「え、あ?」
「レイ。俺の首にキスマーク付けてみろ」
俺は驚いてしまった。
そして少し遅れてから羞恥も自覚したが、それと同時に首を振った。
「や、やだ……付け方分かんねえし、なんか怖い」
「ああ?なんも怖いことねえから大丈夫だって」
キオンが身体を倒し、俺の上半身とキオンの上半身をぴったりくっつけさせながら、また俺の首筋に顔を寄せてきた。
「ん……ッ」
キオンの、息。
それが首にかかっただけで身震いした。
「お、おい、ちょ、と……待って」
「こうやって、肌に強く吸い付いてよ」
俺の言うことなんてちっとも聞いてくれず、キオンは再び首筋に唇を寄せた。
ぢゅっと、先ほどより強く吸われたような気がする。
どっちにしろ痛くて、宙に浮いた足をバタバタと動かした。
吸われているところが熱い。
初めてキスマークを付けられたときはなにをされているのか分からずにパニック状態だったが、今回は理解している分頭が冷静で、恥ずかしい。すごくいやらしいことをしているのではないかという感覚に陥って、身体が強張る。
「……ほら、付いた」
ようやく、唇が離れた。
満足げにぺろっと下唇を舐めながら、キオンが顔を上げた。
「ここと、ここ……はっ、レイは肌が白いから目立つな」
おそらくキスマークが付いているところだろう、キオンがそこ2箇所を指先でなぞる。
そういえば、前にも同じようなことを言われたような気がする……そうだ、小屋で初めてこいつに犯されたときだ。あのときも痕をつけられた気がするが、それどころじゃなかったから忘れていた。
「なんで、付けるの……?」
俺にはキスマークの意味が分からなかった。というか意味なんてあるのか?
キオンは一瞬きょとんとしたが、すぐさま笑顔を取り戻す。
「魔除けだ、魔除け。身体のどこかにこれを付けてもらうと、魔除けになるんだ」
魔除け……おまじないみたいなものか。
「ほら、やり方教えただろ。やってみろ」
そう促されて、俺はキオンの首を見つめた。
あまり気が進まなかったが、俺ばっかり痛い思いをするのも癪だ。俺は恐る恐る首筋に顔を寄せ、その褐色の肌に狙いを定める。
「っ、あったかい」
唇に温もりを感じて、思わず口を離す。
キオンは呆れているようだった。
「あのなあ、レイ。俺だって血が通ってんだぞ。生きてんだから、あったかくて当然だろ」
「う、うるせえなバカ!分かってる!」
再びキオンの肌に唇をくっつけ、今度こそはと吸ってみた。……が、いまいち力の加減が分からない。
ちゅうっと吸ってみるも、息苦しくなって緩める。それをニ、三回繰り返すと「くすぐってえ」とキオンが肩を震わせた。
「んな遠慮すんなよ。お前に吸われたぐらいじゃ痛くねえ……ッいでえ!!」
キオンが声を裏返した。
随分と俺のことを舐めていたようだったので、思いっきりキオンの首に噛み付いてやったからだ。
俺は口角をつり上げた。
「あんまり俺のことバカにすっと、この首噛みちぎってやるからな」
ガブガブその牙を肌に突き立てて、キオンの様子を伺う。突然のことに驚いたということもあってか、最初こそは痛そうな素振りを見せていたが、次第に口元を緩めてニタニタと笑ってやがる。
見てろよ、この野郎……。
俺は噛むのをやめて、キオンの肌に吸い付いた。
さっきキオンが俺にやったみたいに、ぢゅっと音を立てて強く吸い付くと、それを褒めるようにキオンは俺の後ろ頭を撫でてくる。
時間としては少しの間だったかもしれないが、すごく長い時間が経った気がする。
これくらいでいいかと、ゆっくりと口を離すと、吸ったところと俺の唇を結ぶように銀の糸が引いた。
キオンはご機嫌だ。
「なかなか上手だったぞ、レイ」
「バカにすんな」
加減を知らなかったせいでこっちは唇が痛いっつの。
「じゃあ、ちゃんと付いたか確認してごらん?」
さっきから子供扱いをしてくるキオンに苛立ちながらも、キスマークがどんなものか確認しようと、キオンの首に視線をやる。
ロウソクの光が、怪しく照らし出す。……赤い印だ。
「……付いてる」
これがキスマーク?
なんか虫に刺されたみたいな……俺は目を見開いた。
「え、あ、あれっ!?」
ない。さっきまでキオンの首に付けたはずの痕が消えてしまっている。
慌てて痕があったはずの場所を指で擦る。
「な、なんで、確かに付けたのに……!」
触れたらキオンの肌が少しぬれていたから、場所は間違っていないはずなのに。
「……なーんだレイちゃん。そんなに慌てて」
キオンの浮ついた声で我に返る。
恐る恐るその顔を見遣ると、ニヤーッと笑った。
「さっきまではなんだかんだ文句言ってたくせに、いざ付けたら愛着でも湧いたのか?ああ、初キスマークだもんな」
「ンなわけあるか!」
俺は慌てて指を引っ込めた。
「それよりなんで消えた……?俺の見間違いか?」
「いんや、確かに痕は付いたと思うぞ。レイがあんだけ強く吸ったんだからよ」
「お、お前が遠慮すんなって言ったからだろうが!」
「ほう、じゃあアレがレイの本気ってわけか。なるほどなあ……」
キオンのみぞおちに拳をめり込ませた。
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