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温もり
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背中を丸めて痛みに耐えているキオンをよそに、なぜ消えたのだろうかと考える。
やっぱり見間違いか……と、俺はしゅんとした。
そのとき、突然顎を掴まれたかと思えば、息がかかる近さにキオンの顔。その半開きになった口の隙間から鋭い牙……が見えたかと思えば、まるで噛み付くような勢いでキスされた。
「ン……っ!」
驚いているうちに俺の唇を強引に割って、なま温かなキオンの舌が滑り込んできて、またびっくりした。思わず舌を引っ込めるも、キオンの舌に絡め取られてしまった。
微かに聞こえてくる舌の絡み合う音。
俺が身動ぎしても、キオンは追いかけてきて、舌の裏を舐められると背筋がゾワゾワした。
……やっぱり、こいつはキスが上手い。
息苦しさからキオンの胸元を叩いていたはずなのに、いつの間にかまるですがるようにキオンのシャツを掴んでいる自分がいる。
苦しい、逃れたい、怖い。こんなキスに免疫がないからかもしれないが、そんな感情がある反面、どうしようもなく、気持ちいいと思う。
キオンの舌がつつっと歯列をなぞる。
「あっ、ん……!」
身体がビクッと跳ねて、勝手に声が漏れてしまった。
キスだけでなんて声出してるんだ、俺は。羞恥から顔が熱くなる。
だが、それよりも、もっとまずいことがある。
俺はくしゃりと表情を歪める。
た……勃ち、そう……。
さっきから下半身がピリピリ痺れて、変だ。
キスだけで勃つなんてキオンになにを言われるか。
「触ってないのに勃った?さすが童貞ちゃん」
「そんなに俺のキスが良かった?」
……間違いなく言われる。死にたい。
勃つ前に、終わらせなければ。
顔をそっぽに向けてキスを終了させようと試みたが、それを察したキオンが素早く俺の両の頰を掌で包み込み、がっちりと固定してきた。
逃げ場のない状況に、俺は思わず白目を剥きかける。……いかんいかん。
もう強行突破だ。
俺はいやいやと首を振りながら、キオンの胸元を拳で叩く。
「っも、や……だ!」
少し開いた唇と唇の隙間から掠れた声を漏らすと、その瞬間キオンが口を離した。
や、やめた?
あっさりとキスをやめたのに、正直拍子抜けする。
が、やっぱりキオンはキオンだった。
唇を離したかと思えば、顔を押さえていた手で今度は俺の両肩をテーブルに押し付ける。何事かと目を瞬いているうちに、キオンの大きな身体が俺の上にのしかかってきた。
重い。俺はキオンのことを睨みつけ、早くどけとその背中を叩いてやろうと、拳を振り上げたときだった。
俺は異変に気付いて、ピクンと肩を震わせた。
なんか……なにか、当たってる。勘違いじゃない。
硬いなにかが、俺の股間に、
「ひっやぁ……!」
当たっていたそれがズボン越しに擦り付けられ、思わず声を上げた。
……嘘だ。
キオンが、勃ってる……?
しかも、それってもしかして、俺とのキスで?
俺はキオンの顔を見て面食らった。
半開きの濡れた唇と、少し潤んでいるように見える琥珀色の目。その息遣いは荒かった。
なんて余裕のない顔なんだろう。
「レイ」
キオンは歯を出して、ニッと笑った。
「勃っちまった」
そんな爽やかな笑顔で言うことではない。
キオンはぴったりと身体をくっつけたまま、ゆっくりと腰を動かしてズボン越しにキオンのそれを押し付けてくる。
キオンの硬いそれが勃ちそうだった俺の自身を刺激して、俺は焦ってしまった。……俺も、勃ってしまう。
「ば、ばか、やめろ!やだ、っんう……!」
抗議の声も、キオンの唇に塞がれた。
ちゅっちゅっと音を立てて俺の唇を啄ばんだあと、キツく閉じた上唇と下唇の間を舌先で舐めてくる。「開けて」とおねだりしているようだったが、俺が首を振って拒否すると、キオンは苦笑いした。
「レーイ。変なところで意地張るなよ……それとも唇舐められるの好きなのか?」
キオンの魂胆は丸見えだ。そう言って俺が文句を言おうと口を開いた隙に、舌を突っ込んでくるつもりだ。
硬く口を閉ざしたまま答えずにいると、キオンが緩々と首を傾ける。
「……まあ、なんでもいいけど」
キオンの手が俺の上半身をなぞりながら、ゆっくりと下がっていく。想定外の行動に最初はなにをするつもりなのか分からなくて困惑していたが、やがて俺の下腹部まで到達して、俺はようやく察した。
「ッば、」
思わず「バカ触るな」そう言おうと口を開けてしまった瞬間、するりとキオンの舌が口内に侵入してきた。
上では角度を変えながら俺の舌を吸い、下ではズボン越しに俺の性器を撫で回す。情けないかな、触られる前から反応を示しそうだった俺の性器は、キスとキオンの手ですぐに硬くなってしまった。
まさかこんなにすぐ勃ってしまうと思っていなかったのか、キオンはわざわざ口を離して俺の下半身を見下ろした。そしてズボン越しでも分かるくらい膨らんでいる性器を見て、嬉しそうに頬を綻ばせた。
「なんだ、お前だって勃ってんじゃねえか」
「……うるさいバカ」
「ったく、身体と同じくらいお口の方も素直になりゃいいのによ」
キオンは俺の鼻先にキスをし、覗き込むように俺の目を見つめた。
……くそったれ。
死にたいくらい、恥ずかしい。キオンの言いたいことを察して、顔が熱くなるのを感じる。だが、そうなることをここに来る前から少し予感していた俺は、返事の代わりに顔をそっぽに向けた。
キオンは苦笑した。
「だから素直になれよ、レイ」
「死ね」
キオンはわざとらしくため息をついたあと、俺の身体を軽々と横抱きにした。キオンのことだからそのままここで、ということになるかと思っていたが、どうやらこんな硬いテーブルの上で事に運ばないらしい。それが少し意外で驚いた。
「レイ?」
大人しくしているのが気にかかったのか、キオンが俺のことを見下ろしてくる。そして嬉しそうにしながら額にキスをした。
対して俺は、このときどんな顔をしていいか分からず困ってしまって視線を泳がせたが、結局俯いて誤魔化した。
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