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夜から朝
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目を開けたはずなのに俺の目の前は暗かった。
寝ぼけていたこともあって自分が今どこにいるのか分からなくなったが、目の前のそれが小さく動いたことで完全に目が覚めた。
俺は、キオンの両腕によってがっちりと抱き締められていた。
そして目の前にあったのはキオンの厚い胸板だ。それに顔を押し付けられていたせいで暗く思ったのだ。
キオンの右腕は肩に、左腕は腰に回されており、ちょっと俺が身動ぎしたぐらいじゃビクともしない。
……まさか、一晩中こんな格好で寝ていたわけではないだろうな。
寝る直前のことを思い出そうとしてみる。……が、記憶がない。そもそもいつ眠りについたかすら思い出せない。
俺は足をモゾモゾとさせて下半身にはなにも身につけていないことを確認する。ということは、やっぱり行為の最中に寝てしまったということか。
そうか、そうだった。
俺はようやく思い出した。寝たというよりも気絶したんだった。このクソ狼のせいで。
長い、長い夜だった。
酸欠するんじゃないかっていうくらいの、深くて長いキス。
息苦しくて顔を逸らそうとすると、顎を掴まれて元の位置に戻される。そして、まるで「お仕置き」と言わんばりに舌の先を甘噛みされる。
そんなキスに気を取られていると、身体の奥を思いっきり突き上げられて我に返る。気持ちいいを通り越して少し苦しかった。だが、それでもキオンは俺のことを求めてきた。
キオンはイきそうになって余裕がなくなってくると、俺の肩に噛み付いてくる。本気で噛まれたら間違いなく肩の肉が千切られると思うから本噛みではないかと思うが、甘噛みでもないため結構痛かった。多分噛み跡が残っていると思う。
そして口を離して、何度も何度も俺の名前を呼びながら俺の中に精液を吐き出した。
その熱さに俺が声を漏らすと、キオンはすごく嬉しそうな顔をしていたような気がする。
そんな表情で俺のことを見下ろして、まるで言葉一つ一つを噛み締めるみたいにゆっくりと唇を動かして、俺に……、
その言葉を思い出した瞬間ボッと顔が熱くなったのを感じて、俺は首を振った。
もう昨晩のことを思い出すのはやめよう。うるさいくらい心臓が高鳴っている。早く起きて、服を着て、それから顔を洗いたい。
俺はキオンの胸元を推しやりながら、無理矢理身体を起こす。想定はしていたが、その瞬間身体に鈍い痛みが走り、思わずベッドの縁に腰掛けてその痛みが通り過ぎるのを待つ。
もう、身体中が痛い……。
まるで行為のときは麻酔をしていたのではないかというくらい、今は身体が悲鳴を上げている。
というか、そもそも俺は治りかけとはいえど怪我してんだぞ。もっと丁重に……と思ったが、キオンを拒まなかった俺も俺だ。
後悔したが、今更どうこう言っても身体の痛みが治るわけではない。まずはキオンに見られる前に昨日出されたのを掻き出したくて、ベッドから立ち上がろうとしたときだった。
「ひゃ、っ」
突如伸びてきたキオンの腕が俺の腰に回され、恐ろしい力で引っ張られる。
そして、瞬きをしているうちにまたキオンの腕の中に収まっていた。今度は後ろから抱き締められている。
「……どこ、行くんだよ」
不機嫌そうな声で、キオンは俺の耳元で囁いた。その声があんまりにも低かったもんだから、ほんの少しドキッとする。
「別に……ちょっと身体洗いに行くだけ。あ、汗臭いだろうし、その……」
それ以上のことは察してほしいのに、キオンは「なんだ」と首を傾けてくる。
分かっているのか、それとも本気で分からなくて聞いているのか。
キオンの意地の悪い性格のせいでどちらなのか分からない。
ほんの少しだけ振り返って、そろりとキオンのことを見る。
キオンは俺と目を合わせると、ふっと表情を和らげて俺の頰にキスをした。
「そんな顔するなよ、レイ。大丈夫だ、ちゃんと綺麗にした」
「は……?」
思いがけぬ言葉に、目を白黒とさせる。
「き、綺麗にしたって?」
「だからここの中の話だろ?」
冷たい手がシャツの中にするりと入ってきて、俺の下腹部をゆっくりと撫でる。
「っや、」
くすぐったくて俺が身動ぎするのを見て、キオンがより一層俺の背中に身体を寄せてきた。
「お前が寝たあと、身体拭いた。それから……ここもちゃーんと掻き出して綺麗にしといたんだよ」
「ほ、ほんとかそれ」
あんだけ盛ってたキオンが?
「なんだ、信じられねえのか?」
口が裂けても言えないが、ちょっと信じられない。
いやでも、思い返せば確かに前もちゃんと後処理してくれていた。
……ええー、なんだそれ。
「だからもう少し俺と寝てようぜ……お前がいないと寒い」
俺の気も知らずに、キオンはぎゅうっと俺の身体を抱き締めてくる。
寒いのは下半身丸出しだからだろうが……と、言ってやりたかったが、今はそれどころじゃない。
俺が返事をするよりも早くキオンの呼吸は寝息へと変わり、俺の身体を抱いたまま本当に寝てしまった。
俺はキオンが寝たのを確信して小さく息を吐き出す。
抱き締められたのが、後ろからで良かったとつくづく思っている。だって今の顔を見られたらきっとからかってくるに決まっている。
俺が寝たあと、ちゃんと後処理をしてくれた。
中出ししたのはキオンなのだから、本人が責任を取るのは当たり前なのだが、なんだかその事実がどうしようもなく嬉しく思ってしまう俺はおかしいのかもしれない。
でも、自分だけが良ければいいという考えではないということが、愛おしくてたまらなかった。
下腹部に触れているキオンの手の甲に掌を重ねた。
ここに吐き出されたそれの熱さを、まだはっきりと覚えている。
キオンは中出ししたあと嬉しそうにこう言ったのだ。
「レイ、好きだ……大好きだ」
その言葉を思い出し、やっぱり俺は頰を赤くした。
……暫くセックスはなしだ。
きっと、俺の身体も心も、もちそうにない。
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