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傷だらけの高校時代の親友
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俺と奏はお互いに何も声を出さず、お互いの存在を確認するかのようにまじまじと見つめ合う。見つめ合っていた時間は、ほんの数秒だっただろうが数時間のように感じた。
奏のボロボロの姿に何も切り出せないでいると、俺より先に奏が顔を伏せて鼻血を素手で、ぐいっと拭うとふらふらしながらも立ち上がった。
奏は、中々止まらない鼻血を赤く染まった袖で拭いながら恥ずかしそうに微笑んで口を開いた。
「あー……高校以来だっけ? 久しぶりなのにこんな姿見せてごめん」
「いや、別に謝る事じゃねぇだろ。そんな事よりお前大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫大丈夫。オレこんなの慣れっこだから全然へーきへーき」
大丈夫と鼻を押さえながら奏は微笑む。
微笑む姿が、痛々しくて見ていられなくなった俺は、視線を奏から外して地面に落ちているハンカチを拾い軽く汚れを払うと奏に近寄った。
「えっ……何。しゅういちろう……どうし……」
俺が近寄って驚いたのか、奏は驚いて距離を取ろうとしたが、奏が離れる前に腕を掴んで奏の手の平にハンカチを置くと奏はポカンとした表情で此方をみた。
「ちゃんと洗ってあるから、ハンカチ使って鼻血止めろ。血を流しながら笑うな」
「あー……うん。さんきゅ」
「病院……っても今近くにやってる病院ないか。……奏ん家は此処から近いのか? 俺の家に連れてってやりたいんだが、生憎手当て出来るもの揃ってないんだわ」
「あー、うん。オレの家はちょっと遠いかな。……でも休める場所はあるから大丈夫。一人で行けるから修一郎帰ってもいいよ」
「そういう訳にはいかないだろ。あいつが戻って来ないとは限らないし、兎に角安全な所までは俺が送る」
そう言うとハンカチで鼻血を押さえていた奏は一瞬何か言いたそうにしたが口を紡いで俺を見た。
そんな奏を見ていると、高校時代にゲイとカミングアウトされた時の奏の表情を思い出してしまって益々放って置けななくなった。
何も言わず奏をじっと見ていると、深い溜息が聞こえ奏が苦笑いを浮かべた。
「修一郎、昔から頑固なの変わらないな。オレが折角帰れっていってるのになぁ。……これから向かう場所オレの職場なんだけど勝手な事しないって約束して」
「あぁ、分かった」
「それと悪い。オレ強がったけど一人で歩けないから肩貸して」
俺が了承すると、奏は苦笑いを浮かべたまま俺に片手を伸ばした。俺は奏の手を取って肩に回すと奏が言う方向に歩き出した。
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