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「し、椎名さん……スーツ、どうしよう。クリーニング代が……あ、ポケットティッシュならたくさんあるんですけど!」
と、旭は大量のポケットティッシュをごっそり取り出してテーブルの上に置いた。
街や駅で貰って、断りきれなかったポケットティッシュたち。最近では消費しきれなくて、また貰ってしまったと後悔していたが、この日のためだったと思っておこう。
色んな広告がプリントされているパッケージが机に並べられ、瞳を丸くしていた椎名だが、旭があたふたとティッシュを差し出した時、ついにぷっと吹き出す。
「あはは、それ街頭とかで貰うやつ? ほんとにいっぱいあるね。ふふ、わかるな。それ、貰っちゃうよね」
椎名は旭の手に持ったティッシュをとると、主に顔などを簡素に拭き始める。その間も笑いが止まらずで、旭の頬が染まった。
「あー、旭くんが笑わせるから、どうでもよくなっちゃった。ありがとう」
簡単に水滴を拭き取っても、酒をもろにかけられた椎名の髪やスーツはびしょ濡れだ。しかも、カクテルだったようで、シャツに色がついているのもわかる。
頬に集中した熱もすぐに引いていった。
「すみません。スーツのクリーニング代は後日ちゃんと払いますので……」
「ええっ、待って。どうしてその流れになるの? いや、いらないからね!?」
「でも、俺がいたせいだから。……嘘をつかなくていいです。本当はあの人と飲む予定だったんですよね?」
──俺の京介に近づくなんて信じられない!
椎名は恋人はいないと言っていたが、どうなのだろう。勿論、信じられるのは椎名のほうだ。だが、俺の京介と言うくらいだし、一度でも関係を持ったことがあるのならと考えると、信じていいのかわからなくなってしまう。
すると、椎名が困ったように言う。
「嘘はついていないんだけどな……さっきのは向こうの妄想だから放っておいて。付きまとわれてちょっと迷惑してるんだ。というか、旭くん今日は俺と一緒で正解だわ。もし俺がクリーニング代払えって高くつけて言ってきたらどうするの……」
「払います」
「駄目。絶対に払っちゃ駄目。旭くんは良い子すぎ。だからって、人の言いなりになったら駄目だからね」
「……ごめんなさい」
「旭くんが謝ることでもないんだけど……って、旭くんにもかかっちゃってるな。あー、謝るのは俺のほう。巻き込んだ上に本当にごめん。移動してばかりで悪いけど、こっち来て」
旭は素直に椎名についていくことにした。ここで別れても行く宛がないし、虚しい気持ちが残るだけ。それとやっぱり椎名と一緒にいたいという気持ちが強かったからだ。
椎名はカウンターの人からカードを受け取っていた。どうやら上にある宿泊用の部屋へ行って、シャワーを借りるらしい。その時に汚してしまった床のことを謝っていたり、スタッフとなにか話したりしている様子だったが、旭はよく覚えていない。気づいたら椎名と一緒にエレベーターへ乗っていた。
そして、エレベーターは上のフロアに到着する。椎名の言っていたことは本当のようで、ホテルのように長い廊下へいくつもの部屋があるフロアとなっていた。薄暗いバーにいたせいか、明るい照明が眩しく感じる。受け取ったカードキーの部屋に入ると、雰囲気はビジネスホテルみたいだった。ただ異様に大きいベッドを除いて。
(この部屋にこのベッドはおかしくない……!?)
あとは普通な内装や家具類なのに、赤やピンク系のカバーが目立つベッドのところだけ異空間だ。元々こうだったとは思えない。
旭は、高鳴っていく胸の鼓動を抑えられなかった。あんなベッドを見てしまうと、変に想像をしてしまって、当然、椎名とするわけでもないのに。それでも、意識し始めている椎名と一緒にいるから。
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