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そんなこんなで動物を観察して、椎名には話しつつもからかわれてと、気づけばあっという間にナイトサファリのコースは終了した。
思ってた以上に楽しかった。実際になかなか見ることはない、することのない体験に新鮮さを感じ、興奮した。そして、楽しかったと言っている椎名だが、ナイトサファリがというより別の意味で楽しんでいたと旭は思う。
そのあと、専用バスから離れてお土産コーナーへとやってきた。記念とお詫びに椎名からキリンのマスコットキーホルダーを買ってもらって、お揃いでライオンのストラップキーホルダーも購入した。ライオンのものについては、デフォルメされたもので身体の部分がゆらゆら揺れる仕様になっている。
閉園時間も近くなり、動物園をあとにして早くも帰り道。
年齢が一回り以上離れているせいか、椎名は旭をすぐに家へ帰したがる。もう時間が遅いから。危ないからね。何度も耳にした言葉はすでに聞き飽きている。確かに椎名にとっては子供なのかもしれないが、これでも成人をしている身なのに。
動物園から駅までの道をとぼとぼと歩きながら、旭はふと悲しくなって、突然、歩く足が止まる。
「旭くん、どうかした?」
それに椎名はすぐに気づいてくれて、振り向く。
「椎名さん……」
「ん?」
「今日は帰りたくない……って言ったら、どうしますか?」
旭はわがままを口にした。それも、椎名が困るわがままを。
風がさーっと吹き、さわさわと木々が揺れる音が聞こえた。夜の静けさ。飲み込まれそうで怖い。
「え……っと。なに、急にどうしたの。家族と喧嘩でもした?」
案の定、椎名は戸惑っていた。心配をして俯く旭の顔を覗いてくる。
そういうことをして欲しいんじゃない。これでも好きだとアピールをしてきているつもりなのに、いつまでも子供扱いされるのは嫌だ。そんな優しさいらない。
旭は顔を上げて椎名を見つめた。熱っぽい瞳で訴える。
「違います。椎名さんと一緒にいたいからです……!」
「……それは一緒にいるってだけじゃないようだね」
はあ、と椎名から溜め息が聞こえてきた。それを耳にした瞬間にびくっと旭の身体が揺れる。
呆れられただろうか。やっぱり迷惑だと思っているよね。わかっているつもりだったが、気落ちした旭は肩を下げる。
でも、これまでにたくさん我慢してきた。すでに椎名に対する好きという気持ちは心から溢れていて、帰りたくないと切り出した時点で旭のストッパーは外れていた。
「っ、はい、そうです! お、俺、椎名さんが思ってるほど子供じゃないです! デート、いつも楽しいけど、欲張ってキスしたくなっちゃうし、それ以上のこともしたいって……やっぱり椎名さんは一度抱いたら終わりなんですか? めんどくさいって思っているならハッキリ言って欲しいです……」
「は!? なにそれ、どういうこと!?」
「出会った時の、一度抱いてやったくらいでって言葉がずっと離れなくて……」
「あ……あー、あれか。気にしてたんだね。そういえば、ちゃんと話してなかったしね……わかった、旭くんに誤解されたままは嫌だから、ちゃんと話す。ちょっと移動しよう」
とりあえず、面倒ならここまでしないってことだけ言っとく。
椎名は最後にこれだけを言い残した。静かに落ち着いた声で、いつものとは知らない声音だった。
そこから椎名と一切話さずに旭は駅構内まで移動してきて、休憩出来るスペースまでやってきた。ここまで長いこと沈黙するのは初めてのことで、凄く息苦しい。歩いている途中に時折、椎名の表情を見てみたが、なんとも言えないもので旭はさらに苦しくなった。
休憩スペースは、今は旭と椎名の二人しかおらず、ここにしようと言った椎名が椅子へ座る。続いて旭も座ると、椎名はさっそく話してくれた。
「アイツとの出会いはさ、旭くんと一緒で、あんまりよろしくない遊びに誘われてたところを助けたのが始まり。助けただけで特に好意は抱いてなかったんだけど……ここから旭くんと違ってね」
椎名の眉間に皺が寄る。
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