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Calling 2
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「まあ、頑張って」
「冷たい……! えー、飲みにでも行きましょうよ。俺の話聞いてくださいー」
「うん、今度ね。というか、その書類……」
貰いたいのだけど。
と、椎名が言い切る前に、椎名のデスクへ新しい部下がもう一人やってくる。望月という女性で、これもまた書類を手にしていて。
「椎名課長、彼女いるんですか? ってことは、このキーホルダーお揃いです? 課長も可愛いことするっ! 彼女想いなんですね」
「どうも。あのさ、新田、望月……盛り上がってくれるのはいいけど、まずその手に持っている書類を貰っていい……?」
はーい、すみません、という声が飛び、書類が椎名の手に渡った。そのあと新田と望月の二人が話題を戻そうとしてきたが、必要なものは貰ったので、椎名はすぐに解散させた。
ふう、と一息。書類に簡単に目を通し、仕事へ戻る。再び慌ただしい時間の始まりだった。
次々と帰っていく社員を見送り、人数の少なくなったオフィス。椎名がパソコンから離れ、椅子に深く腰掛けられたのは、残った人々で、もうそろそろ帰らないかと提案している頃だった。とりあえずは今日やらなければならないことは終わったので、椎名もその提案に乗った。
みんなまとめて退社して施錠を終えると、それぞれ帰宅していく。椎名も駅に向かいつつ、携帯の画面を点灯させると、メッセージが入っていて歩む足を止めた。
一件は姉から『今日のにぼしちゃん』と、飼い猫であるにぼしの写真が送られてきていた。姉は写真を撮るのが下手なのか、今日も最高にブサイクに撮れている。一枚だけ、姪っ子と一緒になっている写真はまだマシなほうだろう。それより、またエサ以外に、おやつをたくさんあげていなければいいのだが。
そして、もう一件。旭からだった。
──椎名さん、こんばんは。お仕事お疲れ様です。今日バイト先で綺麗な夕焼け空の写真を撮ったので送ります。それではおやすみなさい。
このメッセージとともに雲と真っ赤な夕焼けと、まるで絵に描いたような写真が添付されている。
(旭くん、この時間だとまだ寝てないだろうけど……)
このメッセージが来ていたのは三十分ほど前である。椎名は駄目元で文字を入力していく。
──旭くん、こんばんは。まだ起きてる? 電話してもいい?
旭の声が聞きたかった。朝の旭不足から仕事に打ち込んでいたが、また禁断症状が出てきたらしい。多分これは今まで旭に手を出すのを我慢してきたツケであろう。
旭が欲しい。疲れているせいもあってか、椎名は喉がカラカラのような状態だった。
しかし、数分待ってみたが、返事が来るはずもなく。
(そうだよね。携帯をずっと見てるわけじゃないし……)
おやすみなさいとあったから、本当に寝ている可能性だってあるのだ。諦めのついた椎名は、携帯をポケットにしまって再び駅へと歩きだした。
すると、そのまた数分後に着信音が鳴って。相手は勿論、旭であった。こういう返事代わりに旭のほうから電話をかけてきてくれるところも好きだ。
ああ、好きだな。
心の底からそう感じながら、椎名は電話に出る。
「もしもし」
『もしもし。こんばんは……!』
少し緊張気味の旭の声が耳に響く。たまらない。駅に向かうまで良いBGMになりそうだ。
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