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Calling 3
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「こんばんは。急にごめんね。メッセージを見たら、旭くんの声が聞きたくなって……寝てたかな?」
『いえ、大丈夫です。リビングでテレビを見ていて、椎名さんからのメッセージに気づいたので部屋に戻ってきました。俺も椎名さんの声が聞きたかったので……嬉しいです』
「夕焼けの写真ありがとう。綺麗に撮れてるね。俺、その時はパソコン画面に集中してたから全然気づかなかった」
『そうでしょう? ここ最近の自信作です。……と言っても、椎名さんにメッセージを送りたいけど、なかなか話題が見つけられなくて……必死に探した結果撮った写真です』
「そうなの? 探してくれてたんだ……嬉しいな。仕事終わりのちょうどいい癒しになったよ」
一番の癒しは、旭の存在だけれど。
旭が椎名のためになにかやってくれている。頑張ってくれている。好きでいてくれているというのが身に染みる。その健気さが可愛らしく、椎名だって、でろでろに甘やかしたくなる。
旭の声を聞いていると、次第に会いたくなってきて。でも、旭の前ではかっこいい大人の男でありたいから、椎名はまだ働いてくれる理性でなんとか取り繕っていた。むしろ、今までどうやってこの気持ちを抑えてきたのか、不思議で仕方がない。
『お仕事、今、終わったんですか?』
「うん。今、終わって家に帰ってる途中」
『お疲れ様です。帰ってゆっくり休んでくださいね』
しかし、この言葉の向こうに旭が微笑んでいる姿が見えた気がして、椎名は思わず足を止めてしまう。そして、参ったなとすぐそばの建物の壁に背中を預けた。
本当に今までどうしてたっけ。理性が利かないのだけど。
「……ねえ、旭くん。好きだよ」
ぽろっと気持ちが口に出てしまった瞬間──。
『えっ!? あ、え……うわ……っ!?』
ゴトン!
大きい衝撃音が耳に入り、反射的に電話を遠ざけた。いったい何事。椎名はすぐに電話を戻して心配の声をかける。
「え、旭くん? 大丈夫!?」
『ご、ごめんなさい……! 携帯落としちゃいました……!』
「もーびっくりした……ふふ、そんなに動揺しなくてもいいじゃない」
『うう、ごもっともです……』
携帯を落とすなんて、旭ならやりかねない。心配をしていた椎名も、この想像が出来てしまえば、だんだんとおかしくなってきて笑みが零れた。今は顔を真っ赤にしてるのかな、なんて。
だが、ここで旭を逃がすような、そんなことをするほど椎名は甘くなかった。
「ほら、旭くんも。あと名前ね」
『えっ……そ、そうですよね。わかりました。はあ……いきますよ』
「うん」
好きと言うのに気合いを入れている旭の面白さと、期待と。
にやけてしまう口元を手で覆い隠した。そして、これ以上ないくらいに耳を澄ます。
『……好きです、京介さん』
耳元で聞こえる声に熱くなった。
カラカラに渇いていたものも、今は潤いを増して満たされている。これだったら仕事の疲れだって忘れてしまう。そのくらいに旭の“好き”は迫力があった。
(これは……犯罪級だな……)
また一つ、旭の沼にハマっていく椎名だった。
End
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