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【番外編】金と黒 6
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祐馬と同様に個室へ入ってくる健人に対して、明もソファーの上を四つん這いで近づいていく。
「かわい子ちゃん、ちゃんと介抱してあげた?」
「おー、したした。バッチシってなー」
「ん。よしよし、いい子だね」
猫のように擦り寄ると、健人も抱き寄せてくれて。健人はタオルを持っていて、それが背中にあたり、温かくて濡れていることがわかった。
健人は明を抱き締めつつ、奥にいる祐馬に話しかける。
「祐馬、翔太にも頼んだけど、かわい子ちゃん送ってってくんね? もう帰る準備出来てる」
「同じ方向なんだ? オッケー。んじゃ、待たせてもいけないし帰ろうかな」
祐馬は「よいしょ」と言いながら、席を立ち上がった。さっきまで若さを抜群にアピールしていたくせに、ここにきてその言葉でまんまと打ち消されている。
するりと解かれていく健人の腕。寂しく思いつつ、今度、明の身体は祐馬の腕に抱かれた。そのまま祐馬が唇を寄せてきて、明は反射的に顔を逸らす。
嫌だったわけではない。口淫をしたあとだし、祐馬のを飲んだあとだし。祐馬のことを配慮してのことだったが、明の気配りも叶わず、すくわれるように唇を奪われた。
ちゅっとリップ音とともに唇が離れると、祐馬の手が明の後頭部に回って、ぐいっと引き寄せられて。
「またね、明。フェラ気持ち良かった。あと……あの件、ずっと継続しておくから忘れないで」
耳元に響く声。
「わかった……また」
明は逆に顔を合わせた状態ではなくて良かったと思った。今、自分がどういう表情をしているか、わからなかったからだ。どうせいつものようにどうとでもない表情をしているのだろうが、見て欲しくなかった。健人にも背中を向けていて良かったと思う。
「健人も」
「おーよ。またな」
そのあと、祐馬は健人に軽くハグをして帰っていった。
健人と二人きりで個室に残る。疲労が溜まっている明はもう少し休憩してから帰るつもりでいて、体力回復のために再びソファーへ横になる。
もう少し休憩してからというのは健人も同じだった。健人は明の近くに座り、子供っぽく笑う。
「祐馬のやつさ、明に入れ込みすぎじゃね?」
「ほんとに。もっといい子がいるのにね……」
「いや……そういう意味で言ってねえよ。あのさ……身体、平気?」
しかし、明から出た答えが思っていたのと違ったらしく、健人の笑顔はすぐに気まずい顔になった。そして、恐る恐る問いかけてくる。
明は一瞬だけ健人を睨み、溜め息をついた。無言で健人に片脚を差し出すと、持っていたタオルがふくらはぎに触れて、続けて丁寧に拭かれる。健人は最初からこのつもりでタオルを持っていたのだろう。かわい子ちゃんの件もそうだが、健人は他が駄目でも逃げないだけマシである。
タオルが太腿に差し掛かり、まだ敏感になっている明の身体がひくっと跳ねる。セックスでの昂りも消え失せて、冷静になっている今はその反応が恥ずかしくて、明は仕方なく閉じていた口を開いた。
「ほんっとに……どの口が言うかな。でも、タオル持ってきてくれたってことは、ちょっとは反省してるってことでいい?」
「まあ、労ろうと思うくらいにはな。やっぱり怒ってるよなー」
「怒ってるっていうか、呆れてる。今まで長くつるんできた特権で大目に見るけどさ……他の子だったら泣いてるかも」
「ごめんって。家に送り届けるまでお世話するから……というか、明の特権ってすげえ効果発揮すんのな」
ニッと健人に笑顔が戻ってくる。明はそれを見て、健人を軽く蹴っておいた。
「調子に乗るな。次はない」
「へーい。すんません」
なにも知らないって罪だ。
明の中では健人に対して特別な特権がある。健人が知りもしない特権。好きだから許してしまうのだ。自分でもその恐ろしさを計り知れないくらいで。
明は腕で顔を隠し、健人にバレないように姿を確認した。
(なんで、こんな奴なんか……)
健人が宣言通りに明の身体を丁寧に拭いて、家に送り届けてくれるまでの間、何回このことを思ったのかわからない。
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