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【番外編】金と黒 8
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たった一言で動揺するなんて馬鹿馬鹿しい。
気を取り直した明はソファー席のほうへ戻る。すると、凛が健人の膝に乗っていて、ドクッと心臓が思いのほか跳ねた。しかも、良い感じに笑い合っている。周りの真似で、健人が乗れと言ったのはわかることだが、なんだろう。いつもよりモヤモヤする。まだ祐馬の言葉を引きずっているからだろうか。
明は背後から近寄り、ゴンと健人の頭に拳を落とした。
「った!」
「こら。ひっつきすぎだっての……凛も健人の言うことを真に受ける必要ないからね」
凛の名前が出ると、凛が明のほうを向いて目が合う。ぽっと染まる凛の頬。
すると、その顔を隠すように健人が凛を抱き締めて振り向いてきた。
「おー、明。うわ、めちゃくちゃ可愛いカクテル貰ってきたじゃん?」
してやったりという顔をしていて、明はそれをジト目で返す。
「……そうでしょ。凛、どうぞ。祐馬もありがと」
「どういたしまして」
「あ、ありがとうございます……!」
貰ってきたカクテルをテーブルに置くことはせずに凛へ直接渡した。勿論、健人から離すためではあるが、余裕がなく焦っている自分に明は心の中でほくそ笑んでいた。
凛の赤く染まった頬は、桜色のカクテルに乗っているさくらんぼのよう。健人の言うことをなんでも聞きそうな、純粋な瞳をしている。見れば見るほど、健人の好みだということを突きつけられる。
そして、このあと健人が口にした言葉に、明は信じられないとますます動揺することになる。
「というかさ、このあとのハプバーでの乱パ、凛にもうオッケー貰っちゃった」
「はあ? 嘘でしょ……健人、こんなに可愛い子を脅したなんてサイテー」
「してないっつの! 彼氏と別れて寂しいんだってー。気軽な相手欲しくて来たみたいだし、たまには新しい刺激が欲しいよなー?」
「……ほんとに?」
こくこくと頷く凛。この様子だと、健人に言わされてるということはないようだ。
たった席を外した短い時間で近づいた健人と凛の距離に、置いていかれた気がした。確かに健人は明るいから、心を開きやすいのはわかる。でも、健人がどう誘ったかは知らないが、ハプニングバーで乱交パーティーなんて早々に頷かないだろう。その上、凛の仕草や話し方からして、奥手そうなのに。
「それは……とことん可愛がってあげなくちゃね」
明が無理に微笑むと、凛はやっぱり頬を染めるのであった。
時間が経つにつれ、凛は仲間の中に浸透していった。初めてでない限り、奥手そうな子は警戒してあまり釣れないので、仲間内でも新鮮な空気となっている。
健人は凛に夢中だから放っておいて、明は受けで集まっているグループに入って飲んでいた。これなら祐馬と離れられるとも思ったからである。時折、健人の様子を伺ってみたものの、健人がいい気になっていて面白いものではなかった。凛も健人の膝の上から逃れられないのか、始終、恥ずかしそうにしていて。
「初々しくて良いじゃん、今日のかわい子ちゃん。健人もメロメロになっててウケるんだけど」
「まあ、見た目とか健人のドストライクゾーンだしね」
受けグループの中でよくつるんでいる翔太と大助に挟まれて、凛の話題になった。
話を振ってきたのは翔太だ。翔太はバリネコで、いつか体格の良い人に抱かれるのを夢見ているらしい。健人と同じショップ店員で、着ている服はいつもおしゃれだ。
一方で大助は明と同じでタチもネコもいける。かっこよくも見えるし、可愛くも見える、場合によって印象が変わる顔立ち。本人曰く目は良いらしいが、眼鏡店に勤めていて、つけている眼鏡はころころと変えているようだ。
「明、かわい子ちゃん譲るの? 前とられて怒ってたじゃん」
翔太の会話に乗る形で大助が聞いてくる。明は健人と凛に目を向けて、はあと溜め息をついた。
「今回ばかりは譲るしかないでしょ……というか、最初に譲れって視線で会話したわ」
「あははっ、言わなくてもわかるってさすが幼馴染! じゃあ、今日もネコちゃんすんの?」
「どうしよっかなあ……タチ捨てたわけじゃないんだけどね」
なんだか気が乗らない。かと言って、受けるほうも進んでしたいとは思わないけども。
ネコをすれば、きっと祐馬が回ってくる。けど、少なくとも健人もあるわけであって。どこかで淡い期待をしているのだろうか。滅多にないことなのに、前に抱かれたことを考えると……。
「その気持ちわかるー。なんなら俺とリバでもする?」
「えー、そうする?」
「ぶはっ、マジ? するんだったら今日のセックス捨てて、明と大ちゃんの見に行くわ」
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