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【番外編】金と黒 31
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三人でバーへ向かい、集合時間より少し遅れて仲間の元へ行く。
ソファー席に溜まっている集団。今日の集合状態はずいぶんと良いようだ。前もって健人から、この日に行こうと言われていたので、みんなの予定も合わせてくれたのかもしれない。
ソファー席へ近づくと、みんなの視線が集まる。なぜか無言の視線だった。問題を起こしたのは事実だが、久しぶりの一言くらいはもらえるものだと思っていたので、明は雰囲気に圧され、いたたまれなくなる。
すると、健人が明を連れて中心に立って。一緒にいた凛は空いている席に座る。
(え……なに……?)
これから、なにが起こるの……?
明が戸惑っている間に、健人は口を開いた。
「えー……ここで、愉快な仲間たちにご報告でーす! まずは明が戻ってきましたー!」
ここで、ようやく仲間たちから声が飛ぶ。
明、久しぶり。おかえり。心配したよ。元気にしてた?
いっせいにワッと喋りかけられたので、一人一人対応出来ない。しかし、すべてが明を迎える言葉だったのは確かで、明はふわっと笑った。
「みんながなにも喋らないから驚いた……ありがとう。ただいま」
ほっと一安心したところで、健人の手が明の腰を抱いて引き寄せて。
「それでもう一つ。明と俺ですが……このたび付き合うことになりましたっ!」
「えっ」
明は面食らう。付き合うことは言うのではないかと覚悟していたが、こんなに堂々と発表されるなんて思ってもみなかった。驚いたのと、公表されたことによって平静でいられないのと、頭が真っ白になって言葉が出てこない。
すると、どっと笑いが起った。
「なんで笑う!? 真剣なお付き合いだから笑うな!」
「真剣な……お付き合い……っ、健人からその言葉がでるとは……! ウケる……! そうだよね、真面目な健人くんになったもんね」
「うっせーな!」
「明ー、ほんとに健人でいいの?」
「いいに決まってんだろ! お前ら、ふざけんなよ!」
笑いと、どちらかというと明を心配する声が飛び交う。言葉を失っている明はなにも言えなくて、ほとんど健人がむすっとしつつも返していた。それでも、最後はおめでとうとか、末永くお幸せにとか祝福の言葉が飛んで、恥ずかしくもあり、嬉しくもあった。
それから、明と健人の二人はメインの席に座らされ、祝福モード全開の宴が始まった。
健人はやっぱり変わった見た目のことでちょっかいを出されていて。明のほうはというと、おかえりの声には普通に対応出来たものの、健人の話題となると、どこか落ち着かない感じがした。
健人と付き合い始めたのはいいが、なんだか慣れない。いちいち健人のことに反応してしまう。それに、健人との距離感が掴めないというか、距離が遠のいた気もするし。今まで恋人として付き合うことをしたことがないから、明はイマイチわからないままやってきていた。
「ねえ、健人。祐馬のところに行ってきてもいい? 心配させただろうから……」
「おー、行ってこい。アイツ、明に気があるから油断すんなよ」
「祐馬は大丈夫だよ」
「そういうところだかんな、つけ込まれるの」
「……わかった」
健人は健人で、らしくないことを言ってくるし。今まで凛や、かわい子ちゃんに目が行っていた健人は、どこに行ったのだろう。勿論、今日は釣ろうともしない。明がもやもや嫉妬することはなくなったが、変な感じだ。
明は席を立って、祐馬が座っている場所まで移動する。それに気づいた祐馬は明に笑顔を向けた。
「祐馬」
「明から来てくれるとは思わなかった。健人に飽きた?」
「健人じゃあるまいし、それはないかな」
祐馬の冗談に明もふふっと笑う。そして、祐馬が横に寄ってくれて、空いた場所に腰をおろした。
「あんまり良い噂を聞いてなかったから心配した。連絡手段もないし」
「ごめん。心配させて……祐馬にはもう頼れないって思ったから。祐馬の優しさを利用して悪かったって反省してる」
「もういいよ、謝らなくて。ともかく無事で良かった」
再びごめんね、と言おうとしてしまい、咄嗟に明は口を閉じた。祐馬も凛と同じく謝ることしか出来ない。
次の言葉を明が探していると、先に祐馬のほうが「それよりもさ……」と切り出す。
「ついに健人と付き合ったかー。他のヤツよりかはマシだけど」
「祐馬も健人でいいのって言うのかと思った」
「いや、それは言うよ。他よりかはマシなだけで。というか、健人ならまだチャンスあるし」
「えっ、それは……どうなんだろ。多分ない……かな?」
明がそう言うと、祐馬はぷっと吹き出して笑い始めた。
どこか変なことを言っただろうか。明は疑問に思い、首を傾げる。すると、祐馬が明を見て「冗談だよ」と微笑んで。
「健人と喧嘩したらさ、今度は他の男を漁るんじゃなくて、俺んとこおいでよ。危ないし……こっちがヒヤヒヤする。ついでに健人も殴れるしね。ほら、こっちのほうが絶対良いでしょ? だから、もうやめてね……?」
祐馬はどこまでも優しい。そんな祐馬に明は頷いて「ありがとう」と伝えた。
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