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5‐2
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「って、なんで料理作ってんの?」
「先輩に食べてもらおうと思って」
なんでオレに食べてもらおうと思ったのかさっぱり分からない。
そんなこと今までなかったのに。
「俺、一度も料理作ったことなくて。とりあえず炒め物ならできるかと思ったんですけど失敗しました」
そういえば一度昼を食べたことがあるが、そのときもパンしか食べていなかった。
「両親はどうしたんだよ」
「父が長期出張でいないです。母はそれについていきました。戻ってくるのは9月ですかね」
だから弁当もないし、岡村の両親に会うこともなかったのか。
ってことは……。
オレは冷蔵庫を開けてみる。中にはにんじん、じゃがいも、玉ねぎ以外何も入っていない。
これらも炒め物を作るために買ったものだろうし。
「お前普段何喰ってんの?」
「コンビニで適当に……」
よくそれで料理をふるまおうと思ったものだ。
実際失敗してるし。
失敗したなら用はない、と言って逃げることもできたと思う。
顔には出ていないが、かなり落ち込んでいるのは分かるし。
だけど、落ち込んでいる岡村をほおっておくことができなかった。
昔から変に情けを掛けてしまうところ、直したほうがいいのか……。
「とりあえず、その焦げたやつは捨てろ。もったいないけど食えねぇし。ちゃんとゴミ出しの日に出せよ」
「そうですね……」
「んで、新しく何か買って作ろうぜ。オレもそんな料理うまくねーけど」
岡村は黙って焦げた何かを紙に包んで、燃えるゴミに捨てていた。
そしてその後、薄手の上着を着た。
どうやらオレの言葉を聞いて準備をしていたらしい。
「でも、何を作りましょうか……」
「カレーにしようぜ。米ある?」
「ないです」
「どうせ今後作らないなら白米買っても無駄だしレンジでチンして食えるやつ買えばいいか」
二人で並んで歩きながら話していて思った。
なんかこれ、デートみたいじゃね?
そう思うと顔が熱くなる。
おかしいだろ。そんな関係じゃないし、脅されてるし。
なのに意識してしまう。
「先輩?」
不審に思ったのか岡村がオレの顔を覗き込んだ。
オレはなんでもねえ!と自分に言い聞かせるように声を張り上げた。
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