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番外編1‐1
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岡村晴彦はオープンスクールに来ていた。
家から一番近い高校で、偏差値も学力と同じくらい。第一志望はここだろうと思っていた。
周りの人のほとんどは誰かと一緒にいるようだ。
制服が同じだから同じ中学の人だろう。何人かに声を掛けられたから同じクラスの人もいるのかもしれない。
人の違いすら分からなかったのだ。
最初は人の顔が分からない病気かと思ったのだが、そうではないらしい。
極度に人に興味が持てず、それ故に人の区別がつかないらしい。
両親はそれも個性だと言っていたし、将来はなるべく人と関わらない仕事を探そうかなと思っていた。
そんな俺がオープンスクールで茶色の髪をした人に目をつけられ、カツアゲされた。
制服からしてここの生徒のようで、脅している場所も人が滅多に来ない場所をわざわざ選んだらしい。
その辺をぼんやりと歩いていた俺も問題があるが、カツアゲなんて低レベルなことをしているこの男には呆れしかなかった。
あるだけ金を渡せと言われたので、素直に渡そうとしたときシャッター音が聞こえてきた。
「なんだ!?」
「おー大スクープ!江城丈さんが再び悪事。次やったら退学だっけ!?」
「てめえ!!」
茶髪の男は思い切り拳を握り、カメラを持った金髪の男に殴りかかる。
それは見事に顔にヒットし、ぐえっと声をあげる。
それを俺は他人事のように見つめていた。
再びとどめをかけるように足でカメラの人を蹴り上げる。
それは避けたようだ。機敏な動きに少し驚いた。
それと同時に厳しそうなおじさんがやってきた。おそらく先生だろう。
茶髪の男は先生に連れていかれ、金髪の少年のカメラも持っていった。
「ったく。まさか殴られるとはな」
金髪から黒い髪になり、口調も明るくひょうきんな感じから大人しい感じに変化する。
カツラをかぶり、別人のようにふるまっていたようだ。
「アンタ大丈夫か?」
「まあ……」
むしろ殴られたあなたのほうが大丈夫か、と聞かれる立場なのではないだろうか。
赤く腫れた頬を見るとチクリと胸が痛んだ。
「なんで助けてくれたんですか?ほおっておけば殴られずにすんだのに」
「目の前で変な目に合ってる奴いたら助けるだろフツー」
「そうなんですか?」
俺は初めてその男の顔を認識した。
黒い髪に茶色の目が印象的で、少しつり目だけど怖い印象はあたえない。
むしろ優しささえ感じる。
俺が感謝の言葉を述べようとしたら、どこかから眼鏡の人が現れた。
「新名どうしたの?」
「ちょっと色々あったんだよ。……じゃあな。お前気をつけろよ」
にいなって名前なんだ。
俺は初めて人の名前を一発で覚えた。顔もそう。
それと同時にあこがれの念を抱いた。
この人のことをもっと知りたいと思った。
そんな気持ちになったのは初めてだった。
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