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人は大なり小なり秘密というものを抱えているものだ。
井上裕理はそう思っている。
チャポンと水の音が風呂中に響き渡る。
湯船につかって疲れをとった俺は風呂場から出てバスタオルを探す。
いつものように棚の下から2番目の引き出しを開ける。
そこから適当にバスタオルを取ってゆっくりと頭から足まで拭く。
もう拭く必要はないだろうと思われるくらいに拭いたらいつものようにパジャマを着てドライヤーで髪を乾かす。髪が濡れていると気持ち悪いのでしっかりと乾かす。
「母さん風呂入って」
「はーい」
風呂の順番は大体決まっている。姉ちゃん、父さん、俺、母さんの順番だ。父さんと俺は入れ替わることがちょいちょいあるが姉ちゃんと母さんが入れ替わることはほとんどない。理由は単純明快だ。姉ちゃんは一番風呂が好きで、母さんはゆっくりと1時間半風呂に入るような人だからだ。父さんや俺は一番風呂には興味がないし、風呂は30分はいれば十分だと思っている。
「ん?アンタもう寝るの?」
「宿題あるからそれ済ませて寝るつもり」
「いつも早いよね。じゃ、おやすみ」
姉ちゃんはすぐにテレビを見ながらお酒を飲んでいる。
俺は自分の部屋に向かう。
宿題はとうに終えた。
目的は別にある。
俺はドアを閉め、鍵をかける。わざわざ鍵をかけられるように母さんに頼み込んだのだ。
そのかわりお小遣いがかなり減った時期もあったし、自分の部屋の掃除は自分でしなければならないが。前者はともかく後者は妥当だけど。
クローゼットから黒い箱を見つけ、それをとりだす。
まだ作りかけのセーラー服。生地は違うが見た目はそっくりに作れていると自画自賛。
さらにミシンとソーイングセットを取り出す。
俺の趣味は手芸だ。
それは小さいころから好きだった。母さんの趣味が手芸だったからそこから影響して俺も始めることになったのだ。これは父さんも母さんも姉ちゃんも知っている。もちろん新名も。
だけど最近の趣味は女物の服を作ることにはまっている。
理由は絶対に人には言えない。
「翔くんが女装して恥ずかしがる姿を想像するために作ってるなんて絶対バレたら絶交だよね」
それが分かっていても手を止めることは一切なかった。
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