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新名を何度か家に招いたことはあるけれど、翔くんは初めてだ。
リビングに案内する。そのときに鍵のかかった部屋を通る。
新名は珍しい、とだけ言っていた。翔くんは鍵のついた部屋に興味津々なのか鍵をずっと見ている。
「それ俺の部屋だよ」
「え!そうなんですね!鍵かけるなんて、頑丈ですね」
「うん。まあ思春期だし……」
適当に誤魔化す。茶化される可能性もあるけど、翔くんなら大丈夫だろうという安心感があった。
翔くんは1つ下とはいえ、まだ幼い部分が目立つ。
思春期だしという言葉から何かを連想したのか耳まで真っ赤になっている。
「変なこと考えた?」
「す、すいません!考えました」
ここで適当なことを言えばいいのに、素直に自白しちゃうんだよねえ。やっぱり可愛い。
俺より背も高くて見下ろされているけど、可愛くて仕方がないんだ。
「あ……」
リビングがとても汚い。普段はそこまででもないのだが、急いでいたのだろう。荷物が散乱している。
本来なら片付けるべきなんだけど……。片付けしていたら翔くんと遊べない。
「俺の部屋に行こうか」
「え、でもいいんですか?」
「俺の部屋のものを勝手に触らないなら大丈夫だよ」
心臓はドクドクいっている。最悪の事態は起きるわけがないのだ。
大丈夫と何度も頭の中で反芻させ、封印している扉をあける。
元々隠すものはしっかりと隠しているから大丈夫のはず。
だけどそう思っているときに限って不運というものはつきものなのだ。
コントローラーを出そうと棚をあけ、中身を出そうとしたとき、アレが落ちた。
翔くんはとっさにそれを手に取る。
他意なんてないんだ。ただ落ちたから、拾っただけのこと。
「あ、井上さん……」
俺は翔くんのほうを見る。まだ落としたものが何か、見ていなかった。
翔くんのほうをみて、中身に気が付く。
やっぱり部屋に招き入れること自体間違っていたのだ。
何処か浮かれて選択肢を間違えた。そしてゲームと違って取り返しがつかない。
「えっと……」
言葉が出ない。翔くんも同様だ。
中身ははっきりと見えるわけじゃない。ただはみ出た先に見えるのはセーラー服の一部。
翔くんも察しているのは目に見えて分かる。
「井上さんって……コスプレが趣味なんですか」
「え?」
「俺の友達のお姉さんがそうなんですよ!女装じゃなくて男装趣味みたいな感じで!それがとても似ていてすごいなって!!だからその気にしなくていいっていうか!!えっと……びっくりはしたんですけど……」
翔くんの気の使い方がむしろつらい。だけど、嫌がっているわけじゃないんだ……。
ただ、盛大に誤解されているけど。
「内緒にしてくれる?」
「も、もちろんです!!」
とりあえず、どうにかなりそう。
ほっと息を吸う。
「あの、井上さん……」
「どうしたの?」
「僕、女装趣味でも、なんでも井上さんのことは井上さんだと思ってますから!」
翔くんなりに、大丈夫だよ、と言ってくれているのかな。
優しいなあ……。
「ありがとう」
その言葉を聞けただけ、今は十分だよね。
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