アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
青天の霹靂 9
-
目が覚めるとそこは、気持ち悪いほど静かで穏やかだった。真っ白な天井と真っ白なカーテンで囲まれた空間。点滴のようなものがぶら下がっているのが見えて。
………生きてる。
暫くぼーっと天井を眺め、それから目を瞑ると、微かに外の方からサイレンの音が聞こえてきた。
ゥゥウゥゥ…
カンカンカン…
ドクン…
「っぁ゛…。」
一気にフラッシュバックする。
“もうあかん、死ぬぞ!”
“兄ちゃん…ほんまごめんなっ…。”
“絶対に助けてやるから。”
“俺は君を死なせたくない。”
ドクン…
「ぅ…ぅぁ゛…。」
───“今から足を切断する、いいな?”───
ドクンッ
「ぁ゛、っ…。」
視線を下にずらす。そして震える手でゆっくりと布団を捲(めく)っていく。見るのが怖い。でも、そこから目を離せない。ガタガタ震えながらも捲った先には…
“何も”なかった。
ひゅ、と喉が鳴る。
おかしい。そんなはずない。
「どこ…。」
ベッドのリクライニングを近くにあったボタンで上げ、上半身を起こす。
「どこにあるの…おれの、足…。」
ペタペタと足があるはずの部分を触ってみても、その手はシーツに触れるだけ。
「うそ…、嘘だっ!おれのっ…、俺の足はっ…?」
無い。何処にもない。
腰から順に下へと手を滑らせて。太ももの半分にもいかない所で、それは途切れていた。
「……ぁ、…ぁあ…っ、やだっ、イヤァァァァァァァァアア゛───────!」
狂った様に叫ぶ。もやは狂いたかった。
「先生!新稲くんが…!」
「どうした!………くそっ、押さえて!」
「ぁ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」
「新稲くん!落ち着いて!大丈夫だからっ…。」
何人がかりかで腕を押さえつけられ、そして白衣を着たそいつは、あの時と同じ様に俺の両頬に手をやった。子どもに言い聞かせるみたいに、俺の目を見て、何度も何度も大丈夫だからと言う。
「何がッ、大丈夫だ!俺の足を返せ!アンタのせいでっ…!こんな惨めな姿…、死んだ方がいいっ、殺せよ…殺してくれよッ、出来んだろ
!」
そこまで言うと、白衣の男は先程とは打って変わって、氷のような冷たい眼差しでこちらを見据えた。
「よく考えろ。命が助かっただけでも良かったと思え。」
一瞬温度が下がって、背筋が凍りついたみたいに動けなくなる。でも、怯むわけにはいかなかった。
「あんたに何がわかる!もういいっ…、ここから出て行け!」
白衣の男は少し表情を歪め、そしてその場から立ち去った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
20 / 30