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身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ 5
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「そろそろお別れの時間です。」
そう声が聞こえても、俺は広彰から離れなかった。でも、すでに俺の周りを数人の人が囲んでいて…。
連れて行かれてしまう。
連れて行かないで。
「やだ……っ、やだ、よ……。」
頭を振って、強く広彰にしがみついた。
けれど俺の抵抗も虚しく、あっさりと引き剥がされてしまう。
「まって…!行かないで!!連れて行くなッ!!広彰!!ひろあき……ッ…!」
広彰を連れて行こうとする人の足を叩いてみても、引っ掻いてみても状況は変わらなくて。すぐに先生に引き剥がされた。
「…新稲くん。だめだよ…。」
「……ぁ…、」
伸ばした手は、先生に捕らわれて。届くことは叶わなかった。
どんどん離れていってしまう。
「まって、ぃ、行かないでっ…。せんせい、お願いっ……、最後にするから…。」
「……っ、」
目に涙をいっぱいに溜めて、先生に懇願した。
「はやくっ…、お願いだから…!…行っちゃうっ、から…。」
遂には泣いてしまった俺を見て、先生はまた広彰のそばまで運んでくれた。
再び掛けられていた布をそっと外して、
そして、冷たい頬に両手を添えて最後の口付けをした。
「…ひろあき…、ありがとう……。」
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