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涙
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意識がふわふわとしている。
でも体は重くて、上手く動かせない。
眼下で男の子が泣いてる。
独りぼっちで泣いてる。怪我をしてる。
誰もその子を慰めてあげない。
でも、知ってる。
その子は、「可哀想な子」で、みんな腫れ物にさわるようにその子に接する。
その子も、そう思われてることは知ってるから、周りと打ち解けようとしない。
その子に手を伸ばす。
でも、届かない。
代わりに、別の男の子が、その子の近くにやってきた。その子よりも少し背が高くて、大人びた、少年。
『だいじょうぶ だよ。おれが守るから』
そうやって、その子のことを抱きしめた。
『…みのる』
俺の名前を呟きながら。
*
「…み…る…」
「…」
「…みのる」
「…」
「稔…」
ゆっくりと目を開ける。
相変わらず、光の明暗しか分からない。
その事実に落胆する。
でも、俺を抱きしめながら、震えながら泣いている男の体温を感じ、「帰って来たのか」とぼんやり思った。
「…俺、もう捨てられたのかなーって思った…あんた、もう飽きたのかなって…」
ぼーっとしたままそう言うと、男は一層強く抱きしめてきた。苦しい。
「…なぁ、俺のこと何で監禁してるのか知らないけどさ…こんなこと、したんだから…最後まで責任とって、面倒みてくれよ…」
起き抜けで考えがまとまらない。
男のことが怖くて、恐ろしくて、嫌でたまらないはずなのに、でも、こうやって抱きしめられるのが嬉しい。
もしかしたら俺は、この監禁生活のせいで、いよいよ感覚が狂ってしまったのかもしれない。
「…ん…」
男が俺と唇を重ねる。
慈しむような、ついばむキスに身を委ねる。
そのキスは、涙の味がした。
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