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自分の価値
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「…蓮矢は奏太さんのことが好きなんだな」
「そうだな。でも、稔への好きとは違う。俺が世界で一番大切にしたいのは稔だ」
「…」
即答されて言葉に詰まってしまう。
俺の言葉は断じて嫉妬心からじゃないが、もしかしたら蓮矢はそう受け取ったのかもしれない。
「俺はそんな風に言われるような奴じゃないと思うけど…」
「…稔」
ぎゅ、と抱きしめられる。
苦しい。
「稔は自分への評価が低すぎる」
「……そんなことは」
ない、と思う。
俺は自分のことはよく分かってるつもりだ。
容姿は並。運動神経も並。特に秀でた特技もない。趣味もない。友だち…というか、話せる知り合いもほとんどいない。
そんな男のどこが蓮矢の琴線に触れたんだろうか。
「稔は魅力的だ」
「………嘘だ」
「この髪も、綺麗な瞳も、肌も、指先も、声も仕草も、何もかもが俺を魅了してやまない…」
そう言いながら、蓮矢は唇でそれぞれを辿る。
俺よりも綺麗な人は世の中には溢れるほどいるというのに、俺のことを賛美する言葉が止まらない。
「…意地を張るところも、限界まで頑張りすぎるところも、全部好きだ」
「…」
俺の何を知っているんだ、と言いたくなったが…その懐かしむような口調に、何故か反論できなかった。
俺はやっぱり、過去に蓮矢と会っているんだろうか。どうして、覚えていないんだろうか。
そっと蓮矢の声がする方に手を伸ばす。
あたたかい皮膚に触れる。そろりと辿り、頬だろうと当たりをつける。
ぺたりと蓮矢の頬に手を置くと、その上から優しく蓮矢の手が重なる。
輪郭を確かめるように、両手で蓮矢の顔をなでる。
でも、触っただけじゃ分からない。
監禁生活が長くなりすぎて、少しずつ恐怖心は消えつつある。蓮矢は言葉通り、俺に酷いことは…あのいかがわしいことを酷いことと言わないなら、しない。
俺のことをこんなにも愛しいと言う相手の顔が、少し知りたくなった。
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