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解放
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その日は、なんの前触れもなくやって来た。
蓮矢のことを少しだけ知りたいと思った日の夜。
体を求められることはなかった。ただ、優しく頭を撫でられながら、うつらうつらと昔の記憶を辿っていたのを覚えている。
いつの間にか朝になっていて、起き上がり、周りを見回した。誰もいない。
誰もいない、とわかった。
その部屋は、ベッドと、本棚と、一般的なデスクが置いてあった。余計なものがない、簡素な部屋だ。部屋が大きいから、それぞれが所在なさげにぽつんと置かれている印象を受けた。
大きめの窓にはクリーム色のカーテンがついていて、そよそよと入ってくる風が心地よい。
おそるおそる、立ち上がる。
少しふらつく。でも、自分の足で立てる。
見回すと、見慣れた自分の服がハンガーにかかっているのが見えた。シャツと、ジーパンと…下着は折り目正しく整頓されて置かれていた。
「変なところで几帳面な奴だよなぁ」なんてぼんやりと考えながら着る。
扉の前に行き、深呼吸をひとつしてから、取っ手に手をかける。
「…開いてる…」
扉はすんなりと開いた。
そこから先は、あまり覚えていない。
いつの間にか俺は自分の家の前にいて、どこから、どうやって、ここまで辿り着いたのか思い出せなかった。
自分の部屋は、以前見たときのまま、目の前に広がっていた。
そして俺は、いつの間にか涙をこぼして玄関にうずくまっていた。
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