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帰ってきた日々
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「災難だったなー、露原!」
「…まぁ、見えるようになったから」
荷物を運びながら、一緒に作業している河瀬に答える。すると、河瀬はにこにこしながら俺がいなかった時のバイトの苦労を話し始めた。
どうやら人手不足だったようで、河瀬がだいぶ自分のシフトを増やしてくれたらしい。
それが嫌みに聞こえないのは、河瀬の人徳だと思う。河瀬は、爽やかで、明るくて、人の輪の中心にいるような存在で…ただ、何で俺に構うのかは分からない。
「…色々、ありがとな」
「いや、露原は悪くないって! 事故ったのだって、相手の車の方に過失があったんだろ?」
「まぁ、そうだけど」
「露原は一人暮らしって聞いてたから心配してたんだ。良かったな、親戚の人が来てくれて!」
「…」
視力が戻ってから、俺は、恐る恐るバイト先に電話をしてみた。すると、俺はまだバイト先に所属してることがわかった。
どうやら蓮矢は俺を病院から引き取るとき、親戚だと偽ったらしい。そしてバイト先にも連絡を入れ、しばらく休むことを伝えたらしい。
蓮矢は辞めさせるんじゃなくて、休ませていただけ。一体何を思ってそうしたんだろう。
「休んでた分は取り返すよ」
「無理すんなよな! 何かあったら俺が手伝うから言ってくれ」
にかっ、と人好きのする笑顔を見せられ、いまいちどう反応していいか分からず、曖昧に笑った。
河瀬 秀隆。バイトの同期。
最初はそれだけしか思っていなかったし、俺とは住む世界が違う感じがしたから話しかけることもなかった。
でも人懐っこい河瀬は、積極的に俺に話しかけてきた。自分は大学生で、年齢は21歳で、趣味や特技は…とあれこれ話し始め、いつの間にか俺の中で河瀬のプロフィールが完成していた。
「レポートの提出が間近なんじゃないのか?」
「はっ!! そういえばそうだ!!」
「俺はよく分からないけど、この前聞いた話じゃ、それ出さないと単位が取れないんだろ?」
「そう…そうなんだよ、これがまた難しくてさ!くっそー、もっと文献探さないと…!」
河瀬が頭を抱える。
荷物を積み終わり、倉庫から店に帰る間も、飽きることなく河瀬は俺に話しかけてきた。
もっと上手く会話が出来るようになればいいのにな…と少し自己嫌悪に陥りながら、楽しそうに話す河瀬の言葉を聞いた。
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