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欠落した思い出②
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「お前、稔だろ? 露原 稔」
「え、と…?」
俺の目の前に現れたのは、くすんだ金髪の青年だった。ピアスをつけていて、格好もチャラい。こんな知り合いは覚えがない。
「あ、ひでー、俺のこと忘れてんのかよ」
青年は落胆したように肩をすくめた。
そして、にこりと微笑んで腕を組む。
「俺は、城戸 貴光(きど たかみつ)。小学校同じだったろ。中学も一緒だったけど…まぁ、お前は中1の途中で転校したんだったよな」
「…城戸くん」
「くんづけとかやめろよ、何かくすぐってぇ」
「ごめん、えっと、…城戸。俺、あんまり小学校の記憶なくて」
「ま、10年近く前だもんな。俺もあん時より見た目も変わってるし。稔はぜんっぜん変わってねーな!」
青年…城戸のことをじっと見る。
小学校の時の同級生? 全く覚えがない。でも、俺が中学1年で転校したことを知っている。それに、俺に嘘をついてまで近付くような奴はいないだろう。
だから、城戸の言っていることは本当のことなのだろう。
「なぁ、スマホ持ってる?」
「いや、俺ガラケーだけど…」
「マジかよ。じゃあメアドでいいや。交換しよ 」
「え」
「せっかく久々に会えたんだし。同窓会っつっても、小学校の同窓会はなかったし、中学のは稔、来ないだろ? 」
「…まぁ」
「んじゃ、決まり」
覚えてないことに負い目を感じてるから、無下には断れない。携帯を出すと、城戸は素早い動きで俺の携帯と自分のスマホを操作し始めた。そして、すぐに携帯を返される。
「ま、暇なとき遊ぼうぜ。連絡する」
「…お、おう。分かった」
半ば強引な行為に引っ張られながらも、昔の同級生と会うことなんてほとんどない俺は、社交辞令だろうけど、「連絡する」という言葉が少し嬉しくて、むず痒かった。
城戸はというと、腕時計を見てから、「じゃーな」と言って去っていった。
「… 」
蓮矢といい、城戸といい…俺はどうして思い出せない人が多いんだろう。決して記憶力が悪いわけではない。でも、特に小学校の記憶はほぼ無いに等しい。覚えているエピソードがまるでない。
少しの頭痛を感じながら、俺はカゴを握り直し、レジへと向かった。
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