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記憶を紐解くには①
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「小学校の時の記憶?」
「ああ。河瀬はあるか?」
「んー、そうだなぁ…」
更衣室で着替えながら、河瀬は難しい顔をして考え込んだ。そんなに悩まなくてもいいんだけどな。
「そんなには覚えてないな。高学年くらいにあったことはある程度覚えてるけど、さすがに入学したての頃は…」
「い、いや、そんな遡らなくてもいい。ただ、例えば…同窓会したときとか、みんなの顔分かるか?」
「今でも連絡とってる奴は分かるけど…ま、全員は無理だな。成人式の時に同窓会あった時は、すっげー変わってて『誰だこいつ?』って奴いたし。中には変わんない奴もいるけどさー」
河瀬の言葉に、少しだけホッとする自分がいた。そうだよな、全員覚えているわけない。うちの小学校は、確か4クラスあったし…中には同じクラスになったことがない奴もいる。
俺は他人に興味がないわけじゃないけど、人間関係が希薄になりやすくて…というか、俺が壁を作ってしまっていることも多い。
だから、向こうが仲が良いと思っていても、俺の記憶に残らない可能性が多分にある。
我ながら最低だとは思うけど、あまり人と関わりたくないんだから仕方ない。
「…へへ」
「?何だよ、河瀬」
「いや、嬉しいなぁって思ってさ」
「…何が?」
「いや、露原が俺に話題振ってくれたの初めてだし、こう、俺と仲良くしてもいいって思ってくれたのかなーと」
「…。俺、今まで嫌な態度とってたか?」
「いや!そういうことじゃなくて! 俺としては仲良くしたくて話しかけてたけど、迷惑だったら申し訳ないよなぁって思ってたんだ」
ぽりぽりと頬をかきながら、河瀬は困ったように笑っている。まぁ、確かに俺はとっつきにくい部分があるよな。
「迷惑なんて思ってないけど…」
「じゃあさ!仲良くなろう!俺、露原のことも知りたい!」
「分かった。俺も少し自分のこと話すようにする」
「おうっ!」
河瀬とは少しずつ話せているし、いい奴だから少しくらい自分のことを話してもいいような気がした。ただ、あんまり話すことはないんだけど。
「ん?露原、携帯鳴ってる」
「携帯…、ああ、メールだ」
「彼女?」
「いや、小学校の時の同級生…」
城戸だ。
メールを開くと、『次の土曜に会わないか?』という旨のメールだった。社交辞令かと思ってたのに。
「仲いいんだな」
「……どうだろう」
「なんだそりゃ」
河瀬はからからと笑った。
でも、覚えてないんだから仲がいいか悪いか判断できない。
少し悩んだ末、ひとまず俺は今週末に城戸と会う約束をした。
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