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ひたすらに、優しく
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「これしかなくてごめん…とりあえず、前を閉めれば不自然には見えないと思うよ」
「……」
俺を城戸の部屋から連れ出すとき、蓮矢は自分の着ていたジャケットを俺に着せてくれた。俺のシャツはボタンがなかったり、ところどころ破けたりしていたから助かった。
それから、蓮矢の運転する車に乗せられて、やたらに階数がありそうなマンションに連れてこられた。
「…ここは」
「稔がついこの間まで居たところだよ」
「…」
まさかまたここに戻ってくることになるとは思わなかった。俺はもう心身共に疲れていて、物事を考えることを放棄してしまっていた。
もうどうなってもいい。
「まずはお風呂かな…そのあと傷の手当てをして、それからご飯…」
ぶつぶつと呟きながら、蓮矢がオートロックの鍵を開ける。逃げ出したときは気づかなかったけど、エントランスはとても広くて、ゴミひとつ落ちてないくらい綺麗だ。家賃高そう。
ぼんやりとそんなことを考えていると、優しく肩を抱かれた。
「稔、行こう」
「…」
扉をくぐり、エレベーターに乗せられる。
エレベーターは55階で止まった。
「この階は俺しか住んでないから静かだよ」
「そうなんだ…」
促されるまま、俺は蓮矢の家へと足を踏み入れた。
広くて、清潔な空間が広がっている。照明もあたたかみのある色だ。
通された部屋は、質素ながらにセンスの良さが伺える造りのリビングだった。
ソファーに座らされる。
「…稔」
「…?」
蓮矢は膝をつき、俺の手を握りながら見上げてきた。まじまじと見つめると、やっぱり整った容姿だなと思った。
「大丈夫だから」
「何が…」
「俺は稔の嫌がることはしないよ」
「……知ってるけど」
蓮矢は優しい。知ってる。俺に酷いことなんてしない。痛め付けたり、蔑んだり、罵倒したり…そんなこと、監禁されていた時にされたことがない。
「…」
「…?」
何で悲しそうな顔をするんだろう。
俺、何か変かな…
「…お風呂場に行こうか」
「…うん」
手を引かれ、脱衣室につくと、優しく脱がされる。
壊れ物にでも触れるかのように、慎重に慎重に、蓮矢は俺に触れる。
「…、…っ、見ちゃ、やだ…」
鏡に映る自分の裸体を見た途端、体に震えが走った。ところどころ鬱血し、縛られた跡や殴られたときにできた傷が生々しく残ってる。
立っていられなくなるほど怯えてすくんでしまった俺を、蓮矢は殊更優しく抱きしめた。
「大丈夫…俺がそばにいるから」
「いやだ…こんな、体…汚い…」
「そんなことないよ」
「嘘だ…うそ、俺、あいつらに好き勝手されて、それで、」
「稔」
そっと柔らかく口付けられる。
宥めるように背を撫でられ、何度も優しく口付けられ…体の震えが止まった。じっと蓮矢を見つめると、にこ、と微笑まれた。
「綺麗にしてあげるから」
その言葉通り、蓮矢は隅々まで綺麗にしてくれた。
性的なそれを感じさせることのない洗い方で、丁寧に丁寧に、俺を安心させるかのように手を動かしているように感じた。
そのおかげか、俺はゆったりとした気持ちで湯船に浸かることができている。
蓮矢とは幾度か一緒に浸かっているけど、こんな風に穏やかな気持ちになるのは初めてかもしれない。
「稔」
「…なに…」
「好きだよ…」
「…っ」
耳に吹き込まれる言葉は、優しく、甘い。
絡めとられてしまいそうになる。
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