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君を守るために①
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蓮矢…れんくんと会ったのは、小学校4年生のときだ。俺はその時、父親からの暴力に怯えて過ごしていた。日に日に増える身体的な接触に吐き気がして、でも誰にも言えなくて…
家に帰りたくなかったから、学校が終わると少し遠くの公園に行っていた。そこは小さな公園で、ベンチとブランコと、砂場くらいしかない場所だった。人も少なかったから、ちょうど良かった。
「…、っぐす…」
だって、泣いていても気付かれないから。
その日も、ブランコに座りながら、ぐすぐすと鼻をすすって泣いていた。家に帰りたくなくて、もうすぐ日が落ちるというのに動けずにいた。
「…大丈夫?」
「!」
バッと顔を上げると、俺より年上だろう男の子が心配そうに顔をうかがってきた。
「だ、大丈夫…」
ごしごしと目をこすりながら、無理矢理笑顔を作ろうとする。泣き顔を見られて恥ずかしくて、早くそこを去りたい気持ちになる。でも家には帰りたくないから、逃げ出したとしても、どうしたらいいか分からず踏み出せない。
目の前の男の子も困ったように眉根を下げた。
そして、ふと思い付いたように鞄をあさる。
「はい」
「…?」
棒つきキャンディを手渡される。
カラフルな包み紙にくるまれたそれは、俺が好きな味のものだった。
「あげる。だから、泣き止んで」
「な、泣いてない」
「何があったのかは分からないけど、悲しいときは甘いものを食べるといいんだよ」
「泣いてないってば…」
「そっか」
頭を優しく撫でられる。
その柔らかい触れ方に、じわりと視界が歪む。
「俺以外は誰もいないから…我慢しなくても大丈夫だからね」
にこ、と微笑みながら、男の子は俺が泣き止むまでずっと頭を撫でてくれた。
俺は、名前も何も知らない、優しい男の子が与えてくれる温かさに、その時確かに救われた。
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