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君を守るために②
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次の日。
俺はまたあの公園に足を運んだ。
きょろきょろと見回したけど、誰もいない。
少し残念に思いながらブランコに座り、ギィギィと錆び付いた音を鳴らす。
俯いていると、ふ、とひとつ影が落ちた。
「こんにちは」
「!」
「今日は泣いてないね」
「こ、この前も、…泣いてない」
「そっか」
男の子はくすりと笑いながら隣のブランコに腰かけた。むず痒くて、会えたことが嬉しくて、頬が緩んでしまう。
「俺の名前は、朝野 蓮矢(あさの れんや)」
「…俺は、露原 稔…」
「みのる、みのる…うん、覚えた。俺の方がお兄さんかな?」
「…4年生…」
「じゃあ2つ違いだ。俺は6年生」
小4から見た小6はだいぶ大人だ。
俺は一人っ子だったから、年上の兄弟に憧れていた。だから、甘えてみたくなったのかもしれない。
「れん…お兄ちゃん」
「何かくすぐったい呼び方だなぁ」
くすくすと笑われてしまった。
「呼び捨ててでいいよ?」と言われたけど、年上をそんな風に呼ぶ度胸はなかった。
「じゃあ、れんくん」
「なぁに、みのる」
にこにこと微笑まれ、さらに頭を撫でられて嬉しくなる。こんな風に優しくされるのは久しぶりで、自分の中でどんどん れんくんの存在が大きくなっていくのが分かった。
それから毎日、俺は学校帰りに公園に向かい、れんくんと遊んだ。れんくんは友達と遊ばないのか、と聞いたこともある。でも、「みのるといる方が楽しいよ」と返され、独占できる権利をもらえたように感じて嬉しくなった。
「はい」
れんくんは、いつも決まってアメをくれた。
俺はそれを食べて、包み紙は家に持ち帰る。捨てるのがもったいなくて、どんどん増えていってしまう。
「れんくんって、いつもアメ持ち歩いてるの?」
「大体持ってるかなぁ。甘いものが好きなんだ」
「そうなんだ」
アメは甘くて、口どけが優しくて、れんくんのようだと思う。れんくんは俺のことを殴らない。悪口も言わない。酷いことなんてされたことがない。
それがすごく幸せで嬉しくて、だから例え家で酷い仕打ちを受けても平気でいられた。
辛くて苦しくて悲しいときでも、れんくんのことを考えれば我慢できた。
俺が5年生になり、れんくんが中1になってからしばらくしても、公園で話をすることが多かった。
その時はまだ、幸せ、だったんだ。
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