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君を守るために⑤ (蓮矢視点)
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中学生は結構忙しい。
授業に部活、行事…1日1日があっという間に過ぎていく。特に、中3になってからは塾にも行き始めたから、結構夜遅くまで外にいた。
稔と会わなくなって1年と少し。
何となく公園からは足が遠退いていたけれど、その日は雨だったから歩いて塾から帰らないといけなくて…ふと、いつもは近くを通りすぎるだけだったあの公園に向かった。
別に何か用があったわけじゃない。
受験に追われる切迫した気持ちをなだめたかったのかもしれない。
「…?」
雨だからか誰もいない公園、のはずだったけど、ブランコにぽつん、と座っている人がいた。学ランを着ている。うちの学校の生徒じゃないようだ。
その人は傘も刺さずに、うつむきながら座っていた。
その時、心臓がどくりと跳ねた。
近づき、傘を差し出す。
その人はゆっくりと顔を上げ、俺を見つめる。
「…稔?」
「…れん、くん?」
濡れ鼠になっていたのは、稔だった。
「傘も差さないで…何か、あった?」
「…、…ぅ、…うぅ…れん、くん…っ」
稔は表情を歪ませ、泣きはじめた。
しゃくりあげながら、ごしごしと袖で涙を拭う。
その普通じゃない様子に、俺は胸が締め付けられる思いになった。誰だ、こんな風に稔を泣かせるのは。
俺に会わなくなったのは、楽しいことを見つけたからじゃなかったのか。まだ泣かなくちゃいけないようなところに、いるのか。
「…稔」
「ご、ごめん、違う、違うんだ、会うつもりなんて、なかったのに、ごめん…ごめん…っ」
「大丈夫だから」
「っ、俺、俺は…っ」
「うん。落ち着いて。俺の手、握って?」
「…っ、…っ」
稔は恐る恐る、俺の手を握った。優しく握り返す。
守らなきゃ。稔のことを守ってあげなきゃ。
その時の俺は、それしか考えていなかった。
「俺についてきて」
そして俺は、びくびくと震える稔を傘に招き入れ、自宅に向かって歩き始めた。
稔は、泣きじゃくるばかりで、会話はできそうになかった。可哀想に…誰に何をされたんだろう。
「ここだよ」
自宅につき、扉を開ける。
でも、稔は立ちすくみ、中に入ろうとしない。
「どうしたの?」
「っ、…ダメ、だよ、迷惑かけちゃう、から」
「大丈夫だよ。母さんにも友達1人連れていくよって連絡入れてあるから」
「でも、俺…」
「稔。俺のこと、信じて?」
にこりと微笑むと、稔は少し悩んだ末に、玄関に入ってきてくれた。よかった。
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