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知っていること、知らないこと
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*
しばらくベッドの上で蓮矢と話して、そのあと一緒にシャワーを浴びた。自分一人で入れるって言ったけど、蓮矢は譲らなかった。結局俺が根負けして、
洗ってもらったり、服を着せてもらったり、ドライヤーをかけてもらったり…と、監禁されていた時と変わらないようなことをされた。
それでやっぱりこうやって世話をするのが「幸せ」なんだと言う。俺としては、むず痒くて照れ臭い気持ちの方が強いし、自分で出来ることはやりたいのになぁとも思う。
「このままだと俺、ダメ人間になる気がする…」
「どうして?」
「いや、何か…蓮矢に色々してもらってるから」
「…そうか…でも、つい色々したくなるんだ…」
「あ、いや、蓮矢にしてもらうのは、その、…嫌じゃないんだけどさ!」
慌てて否定すると、蓮矢はしゅん、と眉根を下げたまま俺の頬を撫でた。
蓮矢が悲しくなるくらいなら世話をされてもいいけど…今度ちゃんと話し合わないといけないかも。
そうだ、それと…
「あのさ」
「ん?」
「俺…今の蓮矢のこと、もっと色々知りたい」
「何が知りたい?」
「そうだな…。じゃあ、どんな仕事してる?」
「俺は……、見た方が早いと思う」
「見る?」
俺は蓮矢に優しく手を引かれ、寝室を出た。
2つ隣の扉の前で止まる。
「ここが俺の仕事場」
「…開けていいのか?」
「もちろん」
開けた瞬間、本特有の紙とインクの匂いがした。
見ると、そこは書斎のようだった。
本棚が両脇にところ狭しといくつか並んでおり、結構上の方まできっちりと本が鎮座していた。
ってか本棚の背が高い。天井ギリギリまで設置されてるから、上の方の本を取るには脚立が必要なんじゃないだろうか。
「本がいっぱいだ…あ、これ俺も持ってる。このシリーズも…、あ、これまだ買えてない」
「好きなだけ読んでいいよ。俺はもう何度も読み終わってるから」
「いいのか?!」
ぱぁ、と顔を綻ばせると「ああ、どれでも好きなだけ」と微笑まれた。
「蓮矢って、この作家好き?」
江波 漣(えなみ れん)の本を指差す。
俺が昔から好きな作家だ。全部持ってる。ここにも全巻しっかり揃ってた。
「俺さ、この作家好きなんだ。デビューしたときからおっかけてて、全巻持ってる。雑誌にエッセイとか載ってたらつい買っちゃうんだよなぁ」
「ありがとう。読んでくれてるんだな」
「? 何で蓮矢が礼を…」
蓮矢に促され、書斎机のパソコンを覗きこむ。
そこに映っていたのは、原稿用紙。
書かれているのは、タイトルと…作家名?
「これ、小説? …ん?」
「稔に読んでもらえてるなんて嬉しいよ。書いててよかった」
「え、え、…えっ?!」
「俺のペンネームだよ、江波 漣って」
「えぇっ?!」
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