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「…稔が困ってるように見えるんだけど」
「! 蓮矢」
二人に話しかけられ(しかも奏太には「嫌いだ」なんて言われ)、久しぶりの他者との会話に疲れていたけど、やっと蓮矢が部屋に来てくれた。
ホッと胸を撫で下ろす。
「稔、ごめん一人にして。奏太と滉は酷いことはしないだろうから大丈夫だと思ったんだけど…」
ちら、と蓮矢が奏太を見る。
奏太は、両手を挙げながら苦笑している。
「…いくら奏太でも、稔に酷いことをしたら許さないからな」
「そんなことしないさ」
蓮矢は俺のそばに寄ってきて、ぎゅ、と抱きしめてきた。その体温に安心する。でも、人前だとちょっと恥ずかしい…。
「はは、お熱いことで」
「れ、蓮矢、恥ずかしいから」
「気にしなくて大丈夫だよ、稔」
「いや、気にするって…!」
あわあわと慌てても、蓮矢は離してくれなかった。心なしか立山さんも苦笑いな感じだ。でも、ふと思い出したように思案顔になる。
「あー、今のうちに伝えておくか」
「…?」
「露原くんが、あー、なんだ? ここ何日か…4日くらいか。バイト休んだろ? その間、俺が代打で出てたんだよ」
「えっ?!」
「そうだよ、滉が代わりに!稔くんは滉に感謝し倒さないと…」
「黙ってろ奏太」
奏太はグギギと頭を鷲掴みにされた。
「割れる割れる」
「んな握力はねーよ」
「あの、すごく助かりましたけど…、でも、どうして?」
「奏太に頼まれたんだよ。『蓮矢が困ってるー!』って。まぁ、暇だったし…気にすんな。恩着せたくてやったわけじゃねーからさ。今日は、何日かやったってことの報告に来ただけ。つーか、朝野が独断でやったから、露原くんは知らなかったんだろ?」
「そう、ですね。知らなかったです」
ちら、と蓮矢を見る。
蓮矢は困ったように俺を見つめ返した。
「…バイト、辞めたくないかと思ったんだ。勝手なことだって分かってたんだけど」
「あ、いや、ありがとう。俺のこと考えてくれたんだよは」
「稔は優しいな…」
「そ、そんなこと、ないから。あ…あの、立山さん、ありがとうございました」
「滉、でいいよ。まぁ、俺も昔馴染みに会えたから嬉しかったし」
にこりと微笑まれ、少し緊張が緩む。その笑みを見て、ふと河瀬を思い出した。
立山さん…滉は色素の薄い茶系の髪色で、服装もお洒落な感じだから、どことなく城戸っぽさもあるけど…似てるのは河瀬だな、と感じる。
「滉、昔馴染みに会ったなんて、俺は聞いてないよ」
「あ。…あー…いいだろ、別に」
「よくないよ、俺の滉と一緒に仕事してたってだけでも羨ましいのに」
「別に知り合いってだけだって。……つーか、俺の、ってなんだ。付き合ってるわけでもねーのに」
滉はぷい、と顔を背けると部屋を出ていってしまった。奏太も慌ててあとを追いかけ、部屋には俺と蓮矢が残される。
「…何か、忙しない二人だな…」
「でも、俺と友だちで居てくれる貴重な存在、かな」
「へぇ…」
まだまだ蓮矢のことは知らないことだらけだ。
それでも、こうやってちょっとずつ知れるのは嬉しい。
そういえば、昔馴染みって誰なんだろうか。
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