アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
願望はひとつ (城戸視点)
-
興味本位。ただそれだけだった。
それがこんな結果になるなんてその時の俺は考えてなかった。ただ、呼び出されたときに、「あ、やべぇ、かも」と初めて思った。
「……で、会ったのか?」
「はい…会って、謝ったんスけど…」
目線を反らしながら伝えると「ふーん?」と返された。昔からこの人との会話は苦手だ。つるんでた時から苦手で…ただ、それと同じくらい話せることが嬉しかった。この人に気に入られたかった。
「稔には…もう会う気はないんで」
「当たり前だろ。また会ったら、」
ぐい、と胸ぐらを掴まれ、引き寄せられる。
「これくらいの傷じゃすまねぇから」
「はい、わかって、ます…」
「ほんとか? お前って学習能力ないからさ…昔から俺の言うこと聞いてるわりに、馬鹿なこともしでかしてたろ?」
「もうしませんよ…命惜しいんで」
「さすがに殺しはしないけどな。まぁただ、『死にたい』って思うくらいのことはするかもしれねぇな」
に、と凶悪な笑みを返されゾッとする。
この人は怖い。怖くて、強くて、それで…綺麗だ。
「あとさ、稔って軽々しく呼んでほしくないんだけど」
「…っ、すいません」
稔…、露原に会って近づいたのは偶然でも何でもない。確かに話していく中で小中のことは思い出したけど、会うまで忘れてた。露原っていう奴が居たことすら、ほとんど記憶になかった。
それでも近づいたのは、この人の「特別」だったからだ。
この恐ろしい人に好かれるなんて、一体どんな手を使ったんだと思った。この人の露原を見つめる目は…俺には向けられたことのない優しいものだった。
「すいませんって言うくらいなら、最初からしなきゃいいのにな? お前って本当に馬鹿な奴」
「っ、…!」
鈍い音を立てながら壁に押し付けられる。
ここは路地裏で、通りの喧騒も遠くにしか聞こえない。俺がこの前ボコられた時みたいに、きっと誰も気がつかない。
気付いたとしても、助けなんて来ないだろうし…
俺は助けも求めないだろう。
「嬉しいだろ? 俺に構ってもらえて」
そう。俺は、この人に構ってもらえて嬉しい。
この人が俺のことを考えてるってそれだけで、歓喜で体と心がうち震える。今まで俺のことなんて道端の石ころくらいにしか思ってなかった人が、俺に感情を向けてくれている。
それが憎しみとか嫉妬とか、そういうものでも構わない。俺は、この人に強烈に惹かれてしまっている。
それが愛とか恋とか、そういうもんなのかと問われると分からない。ただひとつ望んだことは、この人の目に映って、存在してることを認めてもらうことだった。
俺をもっと見てくれよ。
そして、その心を占領させてほしい。
「……河瀬先輩」
例え嘲笑われる結果になったとしても。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
55 / 103