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二人だけの秘密
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職場での昼食は各自空いた時間にとることになっていて、最近は河…、秀隆と取ることが多いと思う。
俺は相槌以外にも会話ができるようになった。もともと秀隆は話題が豊富で、俺との会話も途切れることがない。
今日も食堂の一角を陣取り、二人で昼食を食べている。時間が遅くなったせいか、空席が目立つ。この机の周りには人がほとんどいない。
他愛のない話をしていると、不意に秀隆が真面目な顔つきになった。
「あのさ、稔。今度の週末空いてる?」
「え」
「もう予定入っちゃった?」
「あ、っと…ごめん…入ってる」
「あー、いいよ、大丈夫。気にしないで!俺が早めに稔に言っておけばよかったんだ」
秀隆は残念そうに肩をすくめた。
「あれか、デート?」
「…っ、いや、その、」
「………そっかー、デートか~」
「うぅ…」
ポーカーフェイスができない自分が憎い。
こういうとき、どう返したらいいのか分からない。
「いつの間に彼女出来たんだ?」
「あ、いや、彼女じゃ…」
「?違うのか」
「いや、その」
彼女じゃない。
でもそれをどう伝えればいいんだろうか。
「……そういえばさ、この前一緒にスーパーにいた人って、お兄さん?」
「え」
ドキリと心臓が跳ねる。
確かに蓮矢がこの間うちを訪ねて来たとき、食材が足りなくて一緒に買い物に行った。
そこを見られた?
「俺に兄弟、いない、よ?」
「そっか。仲良さそうに歩いてたからお兄さんなのかと思った」
「そ、そっか」
ああでも、兄とでも言っておけばよかったかもしれない。友だち? 親戚? でも、どれもしっくりこない。だって俺と蓮矢は…
「恋人?」
「…っ」
沈黙がその場を包む。
黙っていたら肯定しているようなものだ。
でも、蓮矢との間柄について嘘をつきたくなかった。
「…」
「…」
「…稔、そんな泣きそうな顔しないでくれ」
「な、泣かない…けど、でも、秀隆…俺のこと、嫌だって思ったなら、もう話しかけなくていいから」
「嫌?そんなこと思わないって」
「だって、俺、その人と付き合ってるから…男同士って、普通じゃない、だろ…?」
「んー」
秀隆は腕を組んで難しい顔をした。
このご時世、まだまだ男同士の付き合いは偏見の目で見られる。蓮矢のことは大好きだけど、それを周りに言う度胸は、俺にはない。蓮矢にだって迷惑をかけてしまうかもしれない。
「稔はさ、その人のこと好き?」
「…好き。すごく、好きだ」
「そっか。じゃあさ、堂々としていいんじゃね? 人を好きになるのに性別なんて関係ないって」
「…秀隆…」
「ま、確かに色々言ってくる奴はいるかもしれないから…そうだな、職場の人とか、周りには話さないから安心して」
にこりと微笑まれ、こくこくと頷いた。
本当に秀隆はいい奴だ。
「…ありがとう」
「大したことしてないって。周りに話さないだけ」
秀隆は顔を近づけ、自分の唇に指を当てた。
ひっそりと、小さな声色で呟く。
「…俺と稔の、二人だけの秘密、な?」
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