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内緒の気持ち
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「…今度、旅行に行こうか」
いつものように、蓮矢の家で週末をまったり過ごしていると、急にぽつりと蓮矢が呟いた。
「旅行?」
「そう。作品の舞台になる場所は行ってみることにしているんだけど、良かったら稔も一緒に来てほしいなって…」
「行きたい!…あ、でも、俺あんまり手持ちが…」
「お金なら俺が出すから」
「そういうわけにはいかないよ」
「俺が稔と行きたいって我儘言ってるから…気にしないで」
優しく頭を撫でられ、ついつい流されそうになる。
でも蓮矢に出してもらってばかりは申し訳ない。
「出してくれるのはありがたいけど、全額はさすがに申し訳ないって」
「そう…じゃあ、宿代だけでも」
「そこが一番高いんじゃ…」
「大丈夫だから」
で、
結局押しきられる形で、お金に関してはだいぶ楽をさせてもらうことになった。
「ごめんね、稔。無理を言って」
「あ、いや、その…申し訳ないなって思うだけで、旅行自体は楽しみだよ?」
「…それならよかった」
水族館から帰ってきてから、蓮矢は時々不安そうな顔をするようになったと、思う。
俺はそれを見て…申し訳ないなって気持ちと、蓮矢を不安にさせたくないって気持ちと、俺は蓮矢のこと大好きだから安心してって気持ちと…それから、つい、「嬉しく」なってしまう。
我ながら最低だと思うけど、でも、俺を想ってくれたり、嫉妬してくれたり、今まで向けられたことのない気持ちを向けられて、嬉しい。俺を好きでいてくれてるんだって、思えるから。
「…蓮矢」
「うん?」
「その…、」
向かい合い、ぎゅう、と抱きつく。
蓮矢は驚きながらも抱きしめ返してくれた。
「……好き」
「ありがとう…俺も好きだよ、稔」
俺の心の汚い部分は、蓮矢には言えない。
嫌われたくない。
ずっと蓮矢に愛されていたい。
…俺ってこんなに、欲張りだったんだな。
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