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二通のメール
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「この前は、先に帰っちゃってごめんな」
昼食を食べながら、秀隆に謝った。
せっかくアドバイスをしてくれたり、俺が緊張しないように一緒に来てくれたのに、結局俺は蓮矢と先に出てしまった。申し訳ないことをしたって思っていたんだ。
「いいって。その後は朝野さんと緊張しないで話せたのか?」
「うん。蓮矢が、『ゆっくり慣れていこう』って言ってくれて…だから、俺なりに頑張ろうかなと」
「…そうか。よかったな」
秀隆が優しく微笑んでくれてホッとした。
今度、何かお礼しないとなぁと考えて、ふと旅行のことが浮かんだ。
「今度、旅行に行くことになりそうなんだ」
秀隆は一瞬箸を止め、表情が消えたように見えたけど、すぐにいつも通りの笑みになった。
「お土産買ってくる。いつも色々世話になってるから」
「気にしなくていいのに。…どこに行くんだ?」
「何か、蓮矢が行きたいところがあるらしいんだ。今回は俺が水族館って言ったから、旅行は蓮矢が行きたいところにしようかなって」
「へぇ」
色々と話しながら食べていると、携帯が振動した。見ると、蓮矢からだった。
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件名 ごめん
今日は出版社に行く用事があるから、夜まで電話に出られないと思う。ごめん。
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「そっか…」
「どうした?」
「あ、蓮矢からだった。今日は…仕事が遅くなりそうだって」
大丈夫だよ、っと打って送信。携帯を閉じた。
平日は毎日電話をしているから、仕事の関係で出られそうもないときはお互いに連絡を取り合うようにしてる。
「仲いいな」
「え?あ…えっと、うん、そうだな」
照れくさそうに笑うと、「幸せそうに笑うよなぁ」と苦笑されてしまった。どうやら頬が緩んでしまっていたらしい。
再度、携帯が振動する。
返信かな?と思って携帯を開き、
その宛名を見て硬直した。
(………なんで……)
恐る恐るメールを開く。
中身を見て、さらに眉間に皺が寄ってしまった。
蓮矢は仕事で遅くなるというときに、どうして。
「稔?」
「……秀隆」
「ん?」
「お願いが、あるんだけど」
そして卑怯な俺は、何の関係もない目の前の友人に、助けを求めてしまった。
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