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秘密と嘘 (蓮矢視点)
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稔は放っておくと無茶をしてしまう。出会った当初からそうだ。辛くなって辛くなって、どうしようもならなくなったときに、微かに「たすけて」って信号を送る。
今回もおせっかいかとは思ったけど、苦しむ稔を放っておくことなんて出来なかった。
可愛い稔。
出来れば手元に置いて、どろどろに甘やかして、俺なしでは生きていけなくなってほしい。普段は物わかりのいい大人を演じてはいるけど、心の中はどす黒い感情で塗りつぶされている。稔を怯えさせたくないから、何とか押さえ込んではいるものの…
時々また、稔のことを閉じ込めたくなってしまう。
「…あれ?朝野さん?」
稔のことを考えながら歩いていると、声をかけられた。振り向くと、スーパーの袋片手に、にこやかな青年が立っていた。
「あーあ、残念。先越されたか」
「…稔のお見舞い?」
「そうですね。風邪引いたって聞いたから。先週のあいつの風邪が感染ったんだろうなぁ、って」
「あいつ?」
怪訝な顔をしながら聞き返すと、青年…河瀬くんは一瞬ぽかんとしたあと、にっこりと微笑んだ。
「何だ、知らないんですね」
「…何を」
「いいや?別に。稔が言ってないのに言えないですよ」
河瀬くんは稔のことが好きだ。それは知ってる。
だから俺のことが嫌いだってことも分かる。きっとこれ以上追及しても答えないはずだ。
「…。稔は寝てるよ。起こさないであげてほしい」
「そうですか。あのあと大丈夫だったかなぁって気になってたけど、まぁいいや。職場で聞きます」
にこにことした仮面のような笑みを張り付けながら、河瀬くんは来た道を戻っていく。でも、ふと足を止め、こちらを振り返る。
「真っ先に朝野さんのこと頼るかと思ったけど、そうでもないんですね。稔に会ったら、俺のこと頼ってくれてありがとう、って言っておいてください」
そう言うと、そのまま振り返ることなく河瀬くんは去っていった。
先週…
記憶を辿る。イレギュラーなことと言えば、夜電話が遅くなった日。稔は外にいるようだった。
誰と、どこで、何をしていたんだろう。
どうして俺を頼ってくれないんだろう。
ああまた、この感覚。
ねぇ稔。俺は君にとって、どんな存在なんだろうか。
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