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どれほど望んでも② (河瀬視点)
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中学のセンセはうるさかったけど、何を言われてもそっぽ向いていた。で、その内、たまに何となく気が向いて学校行っても、門前払いされるようになった。黒く染めて、ピアスも外さなきゃ入れねーって言われた。
だから自然と足は外に向いて、昼間から町で「そういう奴ら」とつるんでた。俺と似たように、家とか学校に居場所がない奴らで、そこにいると存在を認めてもらえているようで居心地が良かった。
で、色々な「悪いこと」は大体済ませた。
女とも遊んで…軽い付き合いばっかりしてた。たまーに、俺なりに「好きだな」って思って本気で付き合った子もいるんだけど、そういう子に限って「愛されてる気がしない」って言って俺をフッた。
女がダメなのか?と思って、試しに何人か男とも付き合った。タチもネコも両方やってみた。まぁ、女よりは楽に付き合えたけど…
深く付き合えば付き合うほど、相手が離れていった。みんな言う言葉は決まって、「本気で好きじゃないんだろう」というもの。
「そもそも本気で好きって何だよ」
「何だよ秀、また別れたのか?」
ムスッとしながら愚痴ると、隣で携帯をいじっていた滉が呆れたように笑った。
滉とは中三で知り合った。ゲーセンで一緒に溜まってた中の一人。家が金持ちらしく、つるんでた先輩からは「何かあったらおごってもらえば」と冗談なのか本気なのか分からないことを言われた。
「…俺しばらく付き合いとかいーや」
「ま、いんじゃね? たまには休憩しないとな。あ、でもお前のこと狙ってる奴はうるせぇかもよ」
からからと笑う滉に、「他人事だと思って…」と感じながらも、俺は結構こういう会話ができるのが嬉しかった。滉はきちんと「俺」を見てくれるんだ。もちろんそれは誰に対してもそうで、差別も区別もすることなく、全員対等に接するような奴だった。
俺にとって滉は、頼れる友だちで、尊敬してて…眩しいとさえ感じていた。だから、滉みたいに誰とでも分け隔てなく話せるような、そんな奴になりたいって思った。滉と友だちになれて良かったと思っていたんだ。
…思っていたん、だけど。
滉は俺に、それとは真逆のことも教えてくれた奴だった。それは嫉妬とか、悔しさとか、嫌悪感とか…、って、全部滉のせいじゃないのに、俺は、勝手に滉を遠ざけることになった。
だって滉は、俺が欲しくても持てなかったものを、全部持っていたから。
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