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どれほど望んでも④ (河瀬視点)
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滉の家に行ってからしばらくして、俺は別の奴らとつるむようになった。別に仲違いしたわけでも喧嘩したわけでもないから普通に喋ったりするけど、これ以上滉のそばにいたら惨めな気持ちが募るだけだと思ったから、距離をとった。
「なぁ、秀隆。お前今フリーなんだよな?」
「…そうだけど。何で」
いつものように町の片隅でぼんやりとたむろしてたら、急にそんな話題を振られた。そいつは俺より1個上のセンパイで、他校の奴…のはず。詳しい身の上は知らないし、興味もない。
じ、と相手を見る。
ここらじゃ珍しい黒髪。ピアスとかネックレスとか指輪とか、装飾品は過多。ガタイは…まぁ俺よりいいな。顔も悪くねぇ。つーか名前何だっけ。
「お前さぁ、可愛い顔してるよな」
くしゃ、と前髪を掻き上げられ、イラッとして振り払うとそいつは楽しそうに口の端を上げた。
「可愛いって言われても嬉しくねーな」
「そうか?お前はそっちなのかと思ってたんだけどな」
「別に…固定してねーし。その場の空気で何となくどっちになるか決めてる」
「へぇ、そうなのか」
「つーか、何の話だよ」
「付き合わねぇか?」
「はぁ?」
「いつも滉と一緒に居たからデキてんのかと思ってたけど、違うんだろ?」
「滉はダチ。あいつ普通に女が好きだろ」
「んなことどーでもいいって。なぁ、フリーならいいだろ。俺と遊ぼうぜ?」
「…」
この時の俺は自分の中にある虚しさを解消できるなら何でもいいと思ってた。だから、普段乗らないようなこんな誘いに心が揺らいだ。
「あんたと付き合ったら楽しいのか?」
「まぁ、退屈はさせねぇよ」
「やべぇクスリとか勘弁なんだけど」
「はは、安心しろよ。『健全なお付き合い』だからよ」
「…健全」
その言い回しが可笑しくて吹き出してしまう。昼間っからこんなところでたむろしてる奴らが健全なお付き合いか。
「そうだな、ちょうど暇だったから付き合ってもいい」
「よし、それなら決まりだな」
「…。あんた名前何だっけ?」
「おいおい今更かよ…まぁいいや。俺は朔(さく)だ。赤嶺 朔(あかみね さく)。よろしくな」
そうやって笑った朔は、挨拶とばかりに強引に俺を引き寄せ、唇を重ねてきた。無感情にそれを受け入れながら、さっさとこの空虚な心が埋まればいいのにと思った。
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