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そばにいてほしい ※
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自分の置かれた状況が上手く理解できない。
もがいても身動きがとれないし、長い口付けにくらくらする。
「っは…、秀隆っ、何を…っ」
「稔……」
秀隆は暗い瞳で俺を見ながら再度唇を重ね合わせる。今度は薄く開いたところから中に入り込み、舌同士が絡む水っぽい音が耳に響いた。
両手はひとくくりにされて、恐ろしいほどの力で握られている。秀隆は空いた片手で服の上から体の線をなぞるように指を辿らせ始め、ぞわぞわとした感覚が身体中を這い回って、気持ち悪い。どうしたらいいか分からない。そうこう考えている内に、膝でぐっと昂りを押され、体が跳ねてしまった。
「…稔…好きなんだ…お前のことが、好き」
「秀隆…っ!やめてくれ!」
「……稔…」
必死に訴えかけても秀隆の表情は変わらない。ゾッとするような冷えた視線。もしかしたら素の秀隆に近いのかもしれない。でも、今はきっと正常な状態じゃないことも分かる。
「ひ…っ」
昂りを指でなぞられる。
嫌だ。違う。秀隆とこんな関係になりたくない。こんな風に体を重ね合わせても、お互い後悔するだけだ。視界がぼやけていく。
「…っ、やだ、嫌だよ…秀隆…っ、こんな、こんなの、いやだ…っ!」
「…っ」
秀隆が驚いたように目を見開いて硬直する。
そして泣きそうな表情になり、ゆっくりと拘束していた手を離してくれた。
「っ、秀隆…?」
「…ごめ、ん…違う…泣かせたかったわけじゃ、ないんだ…」
痛む腕をさすりながら起き上がると、今度は強い力で引っ張られ、その腕の中へと閉じ込められた。
「ごめん…ごめん、稔、……俺のこと、嫌わないで…」
普段の秀隆からは考えられないくらい弱々しい声で、震えながら俺を強く抱きしめる。でもどうしたらいいか分からなくて、抱きしめられるがままになってしまっている。
何とかこの状態を変えたくて口を開いたとき、カバンの中で携帯が振動した。
秀隆は名残惜しそうに俺から離れ、ちら、と俺のカバンを見る。解放されてホッとしつつ、カバンの中を漁る。
「!…蓮矢」
「…っ」
電話をかけてきたのは蓮矢だった。
その名前を見た瞬間、安堵感と、助けを呼びたい気持ちと、秀隆としてしまったことの罪悪感で頭の中がごちゃごちゃになる。
「…稔」
電話に出ようか躊躇っていると、そっと携帯ごと手を握られる。そしてそのまま後ろから抱きしめられ、耳元に秀隆の吐息が感じられた。
「行かないでくれ」
「秀隆…」
「…ここにいて、稔。俺のことを独りにしないで…」
混乱する頭では上手く言葉が考えられず、携帯の振動音だけが、その場に響いた。
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