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「君は何にも」
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「…」
蓮矢の家のソファーに座りながら、じっと床を見つめる。言葉や動作はいつも通りなのに、なぜか蓮矢の行動一つ一つにビクビクしてしまう。きっとそれは俺に後ろめたさがあるからなんだろうけど…
「飲み物、持ってきたよ」
「あ、ありがとう」
キッチンに行っていた蓮矢は、カップを持って戻ってきた。手渡され、カップの中の液体がたぷん、と揺れた。ココアだ。俺の好きな飲み物。
「…」
「…」
一瞬の沈黙。
こんなときにどうしたらいいのか、見当もつかない。何を言っても言い訳なのに、話してもいいのかな。でも話さないと説明できないし…でも、そもそも蓮矢は説明してほしいって思ってるのかな。
ぐるぐると思考がめぐる。
「…っ、蓮矢…話、してもいい?」
「話?」
「その…、この前の電話のこととか、今日のこととか…」
「…」
「何があったのか、話したい…」
「…。分かった」
ひとまず話を聞いてくれることになって安堵する。よかった。
「この間の電話のときは…城戸の家に、秀隆と一緒に行ったんだ」
そして一つずつ、なるべく丁寧に話し始めた。
城戸から間違いメールが来たこと、その場にいた秀隆に着いてきてほしいと頼んだこと、蓮矢は仕事で忙しいし心配もかけたくなかったこと、嘘をついてしまったこと。
そして今日、秀隆の家に行った経緯。秀隆の過去の詳細は省いて、その前後の話…。
「……ごめん。俺、秀隆に対して警戒なんて何もしてなくて、……キス、された…」
「…そうか」
「そのとき、蓮矢から電話があって…秀隆には『独りにしないで』って言われたけど、キスされたし、押し倒されたし…一緒にいるわけにいかないって思って、説得して、……ううん、違うな、ほぼ逃げる感じで、出てきた」
まさか、って気持ちが大きかった。秀隆が俺のことが好きだなんて、考えたことなかった。
説得は、した。
俺には蓮矢がいるし、秀隆をそういう対象には見れないって伝えた。でも秀隆は説得で折れてくれたわけじゃない。ただ悲しそうな表情になって「……ごめんな」とだけ言われた。
そのあとは逃げるように秀隆の家を出て、それで、今に至る。
「…秀隆とは、それ以上は何もなかった。信じてもらえるか分からないけど、本当に、何も」
「分かってる」
「…蓮矢?」
「稔が言ったことを信じるよ」
「…っ」
優しく頬をなぞられ、視界が歪む。
蓮矢はどうして俺にこんなに優しいんだろう。
俺は最低なこと、してしまったのに。
「そもそも稔は何も悪くないよ。気付いてあげられなくてごめん」
「でも、俺…」
言葉を続ける前に、ぎゅ、と抱きしめられた。
こんな時でも、やっぱり安心するのは蓮矢の腕の中だって思った。
「……稔は何にも悪くないよ」
耳元で暗示のように囁かれ、そのまま優しく口付けられた。
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